『本屋大賞2018』本の雑誌編集部

●今回の書評担当者●本のがんこ堂野洲店 原口結希子

  • 本屋大賞2018 (本の雑誌増刊)
  • 『本屋大賞2018 (本の雑誌増刊)』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    2,067円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 今年も本屋大賞の季節がやって来ました! 投票している書店員にとっては、第一次候補十作品を読みきるために自分の読書時間の全てを捧げる過酷な読書マラソンの二月と、結果に思いをはせて悶々と過ごす三月を乗り越えて、ようやく迎える祭りの春です! テンションがどんどんあがります!

 去年に続いて、書店員としても本好きとしても、自分の名前を賭けておすすめできるすばらしい大賞受賞作品です。店の屋号を賭けてもいいくらいです(社長にぶっとばされるのでしません)。未読の方は今すぐ買いに出かけましょう、歩いて行ってみましょう。散歩のつもりで家から出てみて、ひとりで本屋へ行ってみましょう。徒歩なりチャリなり電車なりで、辿り着いたお店のなかの、文芸書売場か話題書のコーナーか、手ざわりあたたかそうな素敵な装丁の今年の大賞作品が、どぉんと山盛りにしてありますね。気のきいたお店ならその隣にそっと置いているでしょう、『本の雑誌増刊 本屋大賞2018』。

 皆さんに自分の好きな本を紹介するという晴れがましい機会をいただいて、この一年とても楽しく貴重な経験をさせていただきました。その締めくくりにおすすめしたいのが、この全国津々浦々の書店員たちのつぶやき、絶叫、宣言、ぼやき、絶賛、要請、諸々が詰め込まれた読書案内本です。

 二次にわたる本屋大賞への投票参加には、一次時点で自己推薦本三冊への応援コメント、二次時点で候補十作品全てへのコメントが必要です。そのコメントが文字通り山のように掲載されているこの本は、有名無名、有能無能を問わず、本を商い、本を読む者であることを資格として集められた、それぞれが愛する本への応援文の結集です。

 淡々とした紹介、熱狂的な絶賛、推薦されている本についてはよく判らないけれど推薦人がどれほどその本が好きなのか凄くよく伝わってくる面白いコメント、そして遠い町の知らない本屋さんで働く誰かの名前の山、山、山。ブックガイドとしてだけではなく、日本中の、まだ生きていてあなたのお役に立ちたいと思っている、町の本屋ガイドとしてもお使いいただけるのではないでしょうか。

 それでは最後になりますが、これまでお付き合いいただきありがとうございました。みなさんのなかにも昔の私のように、人と話すより本を読む方が良いとか、人間より本が好きだとか思っている方がおられるかもしれませんが、本当は本が好きだということは、人間が好きだということです。無理せずぼちぼち暮らしていってくださいね。あなたの人生に、本がともにあらんことを。

« 前のページ | 次のページ »

本のがんこ堂野洲店 原口結希子
宇治生まれ滋賀育ち、大体40歳。図書館臨職や大型書店の契約社員を転転としたのち、入社面接でなんとか社長と部長の目を欺くことに成功して本のがんこ堂に拾ってもらいました。それからもう15年は経ちますが、社長は今でもその失敗を後悔していると折にふれては強く私に伝えてきます。好きな仕事は品出しで、得意な仕事は不平不満なしでほどほど元気な長時間労働です。 滋賀県は適度に田舎で適度にひらけたよいところです。琵琶湖と山だけでできているという噂は嘘で、過ごしやすく読書にも適したよい県です。みなさんぜひ滋賀県と本のがんこ堂へお越しください。60歳を越えた今も第一線に立ち、品出し、接客、版元への苦情などオールマイティにこなす社長以下全従業員が真心こめてお待ちしております。