『星は周る』野尻抱影

●今回の書評担当者●ブックデポ書楽 長谷川雅樹

  • 野尻抱影 星は周る (STANDARD BOOKS)
  • 『野尻抱影 星は周る (STANDARD BOOKS)』
    野尻 抱影
    平凡社
    1,540円(税込)
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  • 猫町 (立東舎 乙女の本棚)
  • 『猫町 (立東舎 乙女の本棚)』
    萩原 朔太郎,しきみ,最果 タヒ
    立東舎
    1,980円(税込)
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  • 幽霊海賊 (ナイトランド叢書)
  • 『幽霊海賊 (ナイトランド叢書)』
    ウィリアム・ホープ・ホジスン,夏来 健次
    書苑新社
    7,018円(税込)
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 新年あけましておめでとうございます。埼玉・北与野の書店、ブックデポ書楽の文芸書担当、長谷川です。みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 明けて早々、締切直前ではありますが本屋大賞2018の一次投票(二次投票に臨むノミネート作10作を選出する為の投票)を終えました。じつはわたくし、毎年迷わずにあっさり一次投票ができてしまうタイプのようなのですが、もう少し悩みに悩んで投票できるよう、読書の数を増やしていかないとなと毎年反省しております。読書量、新年の抱負としては、年100冊! お金が持たない気がしますが、なんとか頑張りたいなあと。

 昨年度本屋大賞受賞作『蜜蜂と遠雷』は、発売当時当店での在庫保持できる量が少なく、話題にはなっていたものの入荷分はすべてお客様用在庫として回していたので、一次投票の段階では買えず、読めておりませんでした(ノミネート後に買って拝読し、そこからの1位投票をしました)。私も読めていない本がまだたくさんあるので、一次投票を終えてどんな作品が最終候補の10作に入るか、今から楽しみです。

 閑話休題、今回は私が扱わせて戴いている文芸書のなかで、シリーズ化されているものをご紹介させていただきます。新年ですから、新しいこと・ものにチャレンジするのがいいと思うんですよね。数あるシリーズのなかでも、「もっと注目されていい!」とわたくしが思っているシリーズを、3つオススメします。シリーズ化されているものとはいえ、どれも「1巻目を読まないと2巻目からちんぷんかんぷん」ということではないものを選びましたので、ご安心くださいませ。

■平凡社『STANDARD BOOKS』シリーズ

『「科学的視点」をテーマに、科学者・作家の珠玉の作品を、一作家一冊で紹介する(平凡社のシリーズ説明文より引用)』シリーズ。これまでに『科学者とあたま(寺田寅彦)』、『雪を作る話(中谷宇吉郎)』などが第1期全8作で刊行され、つい先日『人魚の話(南方熊楠)』『からだの声をきく(多田富雄)』など第2期全6作が完結したところ。このシリーズの良さをひとことで言うなら「編集力」。名前は聴いたことがあるけれどどこか自分とは縁遠い場所にいた科学者たちが、この本を読むことでぐっと身近なものに感じられるようになる不思議。装丁も美しく、特に『野尻抱影 星は周る』は宝物になるような、プレゼントに最適な一冊です。よくこんなバランスの良い本を作れるなあ......と、ただただ感嘆するばかりであります。

■立東舎『乙女の本棚』シリーズ

 古典名作を、今話題のイラストレーターがすべての挿絵を描いて現代に蘇らせようという、リミックスシリーズ。「萩原朔太郎『猫町』の挿絵を、ブラウザゲーム『刀剣乱舞』でお馴染みの「しきみ」さんに描いてもらおう」......この発想じたいがまずとんでもないし、この企画に実際にOKを出して実現させてしまう立東舎という会社も凄い。最初に新刊配本で手にしたとき、あまりの衝撃にすぐ追加注文を出しまして、今でも当店では必ず複数冊在庫を持つようにしております。小説としても、画集としても楽しめる1冊。最新刊が夢野久作『瓶詰地獄』(挿絵はホノジロトヲジ)なんですが、よくもまあこの作品を選んだものですよ......この企画を出した編集者さんの、エッジの効いたセレクトにこれからも期待しています。

■アトリエサード『ナイトランド叢書』シリーズ

 知る人ぞ知る、幻想・怪奇の海外文学作品シリーズ。ウィリアム・ホープ・ホジスン、E・F・ベンスン、クラーク・アシュトン・スミスなど幻想・怪奇作家の傑作を選りすぐり、1冊に纏められております。初訳も少なからず含まれており、出版されることそれじたいに、まず大きな価値があるのです。正直私もそこまで詳しくはなく、すべてを理解してはおりませんが、愛好家にとっては新刊が発売されることそれじたいが事件であり、歓喜の瞬間であるということはよくわかります。発売されるたびにかならず発売日前後にお買い上げになられるお客様がおられまして、そのお客様のためにけして在庫を絶やすまいと常に発売日情報をチェックし、真剣な仕入れをしているのであります。周辺知識を仕入れることも含めて私も挑戦してみたいシリーズです。

 以上3シリーズをご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。ほかにも紹介しきれなかったシリーズがまだまだございます。ぜひぜひ、お客様ご自身で、長年楽しめるシリーズを見つけてみてください。

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ブックデポ書楽 長谷川雅樹
1980年生まれ。版元営業、編集者を経験後、JR埼京線・北与野駅前の大型書店「ブックデポ書楽」に企画担当として入社。その後、文芸書担当を兼任することになり、現在に至る。趣味は下手の横好きの「クイズ」。書店内で早押しクイズ大会を開いた経験も。森羅万象あらゆることがクイズでは出題されるため、担当外のジャンルにも強い……はずだが、最近は年老いたのかすぐ忘れるのが悩み。何でも読む人だが、強いて言えば海外文学を好む。モットーは「本に貴賎なし」。たぶん、けっこう、オタク。