『返品のない月曜日』井狩春男

●今回の書評担当者●東京堂書店神田神保町店 河合靖

  • 返品のない月曜日―ボクの取次日記 (ちくま文庫)
  • 『返品のない月曜日―ボクの取次日記 (ちくま文庫)』
    井狩 春男
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 絶版もしくは品切れ重版未定状態のために、注文したいがそれが叶わない。
 本屋に勤めていると、お客様の問合せ時、ブックフェアの選書や欠本調査等、品揃えに関わる書店独特の作業中、毎度毎度そのことで頭を悩ませる。
「何でこんな良い本を品切れにしてしまうのか」本に携る仕事を持つ友人たちとの会話で毎度必ず誰かが言うセリフだ。

 これまでに何度か大手書店での独自の復刊文庫フェアという取り組みを見ており、それを羨ましく思いながらも「東京堂書店でもそれが出来ないか」と色々と模索してきた。

 実行に移すべく、まずは会社の了承を取ることから始まり「東京堂書店オリジナル復刊は文庫本にする」という考えのもと、出版社数社に復刊するにあたっての諸々の条件を教えていただきつつ議論を重ねた末、遂に復刊タイトルが決定した。

 発売当時(1985年にちくま・ぶっくすとして刊行した後1989年ちくま文庫)本に携る人必携の書で書店員のバイブルとも言われた名著、また取次のことを書いた唯一の書でもある『返品のない月曜日』(井狩春男著)である。

 協力いただく出版社を筑摩書房としてから復刊タイトル決定まではほぼノータイム。タイトル決め会議において副店長の一声、満場一致で即決したのである。

 そこで我々を頷かせた佐瀬副店長のコメントを紹介したい。

「私事で恐縮ですが。人間関係全般が壊滅的だった私は、「どうしても働かねばならないのならば、すくなくとも好きなことを仕事にできれば続けられる気がする。あわよくば書店とかに勤められたら最高!」などと学生の浅知恵を働かせていました。

 そんなとき、受験で大変お世話になった高校の世界史の先生に、「できれば将来は本に関する仕事につけたらいいなあ。そうすると書店とかですかね~」という疑問を口にしてみたところ「出版業界に就職したいなら絶対にこれを読め!」と必読書として強く勧められたのが本書『返品のない月曜日』。はじめての「取次」という仕事との出会いでした。

 流石に取次や書店は狭き門、いろいろな本に関する仕事を調べまくり、落ちまくり。バブル崩壊のあおりも受け紆余曲折、運よく「東京堂書店」に拾っていただき、いまにいたっております。さすれば、この本は「私を今の仕事に導いてくれた本」であり「ちくま文庫で当店限定の復刊をと考えるなら?」絶対にこれしかない! という1冊でした。

「本にまつわるあらゆることが好き!」という皆様にぜひ、「返品のない月曜日」という最高のタイトルの意味を確かめるべく、お手にとっていただけましたら幸いです。」(以上、佐瀬コメント)
 
 1980年代、当時勤めていた書店(八重洲ブックセンター)にはトーハンと日販の2大大手取次が入っていたが客注品が店着するまでに相当な時間が掛かっていた。その頃は1週間から10日、版元によっては10日から2週間掛かることはざらであった。

 しかし『返品のない月曜日』の井狩春男さんが勤める鈴木書店帳合の出版社で在庫が有れば、客注が出た場合それが朝なら最速でその日の昼過ぎには入荷する。八重洲ブックセンターの場合は朝便と昼便(稀に夕便)の搬入があったのでほぼ当日もしくは翌日には本を受け取ることが可能であり本当にお客様から感謝された。八重洲でそうなのだから、東京堂書店は鈴木書店には歩いていける距離にあったので相当使い勝手が良かったのだろうと想像出来る。

 また鈴木書店の人たちはとにかく本について詳しかった。問合せすると在庫の有無はもとより品切れや重版等の情報も頭に入っていて電話口で不安になることは無かった。

 更には本の扱いがとても丁寧であった。これは以前勤めていた八重洲ブックセンターでも、現在勤めている東京堂書店でも最も重要視している事であり、スタッフ全員もその意識は絶えず持っており商品管理は徹底している。

 長い間鈴木書店の窓口を担当されていた井狩春男さんのあまり一般的に知られていない取次の裏方ばなしや、読者のもとに本を届けるためにどれだけ苦心しているかを描いた『返品のない月曜日』こんな名著が東京堂書店オリジナル復刊文庫として販売出来るのを心から幸せに思う。是非とも多くの方々に手に取っていただき、読んでもらいたいと願う。

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東京堂書店神田神保町店 河合靖
東京堂書店神田神保町店 河合靖
1961年 生まれ。高校卒業後「八重洲ブックセンター」に入社。本店、支店で28年 間勤務。その後、町の小さな本屋で2年間勤め、6年前に東京堂書店に入社、現在に至る。一応店長ではあ るが神保町では多くの物凄く元気な長老たちにまだまだ小僧扱いされている。 無頼派作家の作品と映画とバイクとロックをこよなく愛す。おやじバンド活動を定期的に行っており、バンド名は「party of meteors」。白川道大先生の最高傑作「流星たちの宴」を英訳?! 頂いちゃいました。