『茨木のり子集 言の葉1』茨木のり子

●今回の書評担当者●文信堂書店長岡店 實山美穂

  • 茨木のり子集 言の葉Ⅰ(全3巻) (ちくま文庫)
  • 『茨木のり子集 言の葉Ⅰ(全3巻) (ちくま文庫)』
    茨木 のり子
    筑摩書房
    886円(税込)
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 今回、茨木のり子を紹介するにあたって、作者や作品について、あまりつらつらと書くのはやめておこうと思います。詩を解説するより、読んだ時の印象を大事にしてほしいからです。

 作者の代表作のひとつである「わたしが一番きれいだったとき」という詩と、私が出会ったきっかけは覚えていません。でもひと目見たときから、心臓に何かが突き刺さったように感じたことだけは覚えています。その、刺さった何かは今もそのままです。それまで詩を読んで、深く印象に残ったことがなかったので、なおさら衝撃が大きかったのだと思います。

 詩人・茨木のり子は1926年生まれ。女子も資格を身につけて一人で生き抜く力を持たねばならぬ、という父親の方針で、1943年に帝国女子医学・薬学・理学専門学校(現・東邦大学)薬学部へ入学。1945年学徒動員で就業中、敗戦の放送を聞きました。繰り上げ卒業で薬剤師の資格を得ますが、結局その職にはつくことはありませんでした。

 今では詩人としてその名を知られていますが、新聞社主催の賞に佳作当選した戯曲から、文学者としてのキャリアは始まります。その後、言葉の練習のため詩を勉強し、自分でも詩を書くようになりました。「わたしが一番きれいだったとき」を書いたのは戦後10年が経ったころ。その詩を書いたころを振り返ったエッセイ「はたちが敗戦」も収録されているので、合わせて読んでみてください。童話・脚本・詩・エッセイなど数々の作品を発表し、2006年79歳で死去。

 情報過多な現代だからこそ、たまには静かに言葉の美しさを堪能してください。

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文信堂書店長岡店 實山美穂
文信堂書店長岡店 實山美穂
長岡生まれの、長岡育ち。大学時代を仙台で過ごす。 主成分は、本・テレビ・猫で構成。おやつを与えて、風通しの良い場所で昼寝させるとよく育ちます。 読書が趣味であることを黙ったまま、2003年文信堂書店にもぐりこみ、2009年より、文芸書・ビジネス書担当に。 二階堂奥歯『八本脚の蝶』(ポプラ社)を布教活動中。