『先生と僕 夏目漱石を囲む人々 青春篇』香日ゆら

●今回の書評担当者●文信堂書店長岡店 實山美穂

  • 先生と僕 夏目漱石を囲む人々 青春篇 (河出文庫 こ 23-1)
  • 『先生と僕 夏目漱石を囲む人々 青春篇 (河出文庫 こ 23-1)』
    香日 ゆら
    河出書房新社
    896円(税込)
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 夏目漱石といえば?『こころ』『坊ちゃん』『吾輩は猫である』『それから』『三四郎』...... ん? 旧千円札、確かに。etc.

 日本を代表する文豪の一人なので、教科書で読んだ、課題図書で読んだ、国語・現代文の試験の問題文で読んだ、など触れる機会が多く、読んだことはなくても、漱石を知らない人の方が少ないと思います。そんな夏目漱石をこよなく愛しているのが、香日ゆらさんです。ご本人曰く、"漱石"ではなく"金之助(漱石の本名)"の方がしっくりくるようですが......

 香日ゆらさんの夏目漱石関連の作品は、『先生と僕 夏目漱石を囲む人々』(メディアファクトリーのちにKADOKAWA)、『漱石とはずがたり』(KADOKAWA)、『夏目漱石解体全書』(河出書房新社)とあります。今回紹介する本は、カドカワ版を再編集し、加筆修正の上『青春篇』『作家篇』と分けて文庫化されたものです。

 他の本も探して読んでみてください。文庫化の際に掲載されなかった話が元のカドカワ版には載っていますし、『先生と僕』ではネタにできなかったものが『漱石とはずがたり』で楽しめます。そうすると、夏目漱石についてもっと知りたくなってくると思います。

『先生と僕』には、香日さんが数々の資料から読み解いた夏目漱石の姿を、四コマ漫画でわかりやすく読むことができます。その漱石は文豪のイメージからは異なっていて、とってもキュート。友人や弟子たちも変人ぞろいで彼らのことを知らなくても楽しめること間違いなし。教科書に載っていたあの人、この人と漱石の関係など、新しく学べることも多いはずです。

 例えば、漱石の一番古い弟子、寺田寅彦。「天災は忘れたころにやってくる」と言った物理学者です。漱石にも尊敬され、特別な存在だったようで、漱石が友人の正岡子規との、最後の別れの場(漱石がイギリスへ留学している間に、子規は長く患っていた病気で亡くなります)にも同席していました。

 漱石オタクを公言していた香日さんですが、この本の著者紹介で、2019年の大河ドラマ「いだてん」で明治ことば助言を担当、と知りました。もうただのオタクではない、ファンとしては「すごい」としか言えません。

 これらの香日さんの本をきっかけに、漱石や、他の人たちの本も読みたくなるかもしれません。私は、随筆や書簡集が読みたくなりました。漫画とあなどるなかれ、面白くてタメになる本なのです。

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文信堂書店長岡店 實山美穂
文信堂書店長岡店 實山美穂
長岡生まれの、長岡育ち。大学時代を仙台で過ごす。 主成分は、本・テレビ・猫で構成。おやつを与えて、風通しの良い場所で昼寝させるとよく育ちます。 読書が趣味であることを黙ったまま、2003年文信堂書店にもぐりこみ、2009年より、文芸書・ビジネス書担当に。 二階堂奥歯『八本脚の蝶』(ポプラ社)を布教活動中。