6月22日(木)君に幸あれ!
町田市民文学館ことばらんどで開催中の「本の雑誌厄よけ展」は、今度の日曜で終了するが、先週土曜日、「本の雑誌ができるまで、編集ウラ話」というイベントをやるというのでいってみた。
私が本の雑誌の実務をやっていたのは2000年12月までだから、それからもう16年以上がすぎている。隔世の感がある。だから、最近はどうやって雑誌を作っているのか、との興味がある──と言いたいのだが、実はイベント終了後の打ち上げが楽しいので行ってみたにすぎない。
本の雑誌厄よけ展が始まったのは4月22日。それから約2カ月続いたわけだが、その間、私が当館を訪れたのは3回。そのたびに本の雑誌のスタッフたちと飲んできた。先週の土曜日が4回目である。最近はほとんど都心に出かけず、だから飲む機会が少ない。競馬友達と競馬場にいったときは帰りに飲むけれど、それを除けば飲み会は隔月で開いている勉強会のときだけだ。楽しいですねえ、気のおけない友と飲む酒は。
しかし先週の土曜日は、飲み屋に移動する前からテーマがきまっていた。
そんなこと、私は書いていない!
イベントの中で浜田公子はこう言ったのである。本の雑誌の入社試験を2度めに落ちたとき、会社から来た手紙に私が「君に幸あれ!」と一筆書いていた、というのだ。
ご存じない方のために補足しておくと、本の雑誌で営業事務をしている浜田公子は、3回応募して3回目に入社した。1回目は書類で落ち、2回目は面接で落ち、3回目に入社がきまったという「伝説的な社員」である。高校時代から本の雑誌の社員になることを目標にしていたというのだが、そこまで熱烈な人は入社した途端に幻滅することが多い。それはそうだろう。普通の会社なのだ。特に素晴らしいということはない。
ところが以前も当欄で書いたけれど、いまでも浜田公子は会社が大好きである。夕方、仕事が終わって帰るとき、今日も楽しかったあ、と思うんだそうだ。ヘンなやつである。
いや、それはいい。問題は、2回目に落ちたとき、会社から来た事務的な通知の余白に、私が手書きで「君に幸あれ!」と書いていた、と浜田は主張するのだ。
小さな会社であるから社員募集の機会も少なく、せっかく応募してくれたのにみなさんの期待に応えることも少ない。だから、そういう機会があるといつも申し訳ないという気持ちはあった。
しかしそのことと、会社からの通知に一筆加えるということは別である。自分はどういう人間であるかというセルフイメージというものがあるが、私はそういうことをする人間ではない。しかもその文面が「君に幸あれ!」だぜ。そんなこと、絶対に私は書かない!
先週の土曜日はイベント終了後、突発的にサイン会になった。会場で販売していた『ベスト10 本の雑誌』にみんなでサインしようとなったのだが、何人もの人が「君に幸あれ!」と一筆加えてくれ、と言うのだ。もうギャグになっているのである。仕方ねえなあとサインはしたけれど、浜田公子への手紙には書いていませんからね。その点は誤解なきように!