第23回

 この号の撮影には、持ち込みとAVの宣材のグラビア以外、ほぼすべて立ち会っている。
 中でも鮮明に覚えているのが、女のコ二人組の泡ブロ入浴シーンを撮る企画グラビア「BUBLLE SISTERS」(バブル時代に入る前のことなので、あやかってつけたわけではない)。この企画はレギュラーで、基本的にはミニスカートで逆立ちのシーンを野外で撮る。紙面を飾るのは、スカートもひっくり返って、パンツが丸見え状態になっている写真。現場では「パンツが見えないようにうまく支えてやってね」と言いつつも、フツーなら組み体操でもない限り、逆立ちを受け止めるなんてしたことがないわけで、うまくできるわけない。「見えちゃってるよ。やり直し」と何度も失敗させては、パンチラどころかパンモロを狙う。モデルとはいってもほとんど素人に近いコ達なので、うまくノセつつ、疑念を抱かせないのが、編集の大事な仕事だ。

 その後は、スタジオ(時には野外)で洋バスにシャボンの泡を立て、真っ白なストラップレスのトップとハイレグのボトムの水着(編集部では"泡水着"と呼んでいた)を着せ、その上に泡を塗りつけて(これも編集の大事な仕事)、あたかも乳房と局部だけ泡で隠しているセミヌードっぽく撮影する(たまに水着が見えてしまっているのが、掲載されていたので読者は気づいていたかもしれない)。
 ただ、この時は、梅雨のシーズンだったので外撮りはなしにして、いきなりスタジオ撮影からだった。モデルは17歳の里佳ちゃんと弥生ちゃん。初対面同士ながら、同じ歳のせいかすぐに打ち解け、撮影はノリノリだった。外撮りの逆立ちの代わりに、ベッドの上で下着姿やノーブラにキャミソール+スキャンティ姿でジャレあうシーンを撮っている時も、キャミソールから乳輪が飛び出しても気にしないほどのテンションだった(もちろんスタッフ一同で盛り上げているせいもあるが)。

 極めつけは、風呂の撮影になってから。撮影中に泡が消えてきて、水着バレしそうになると、カメラマンにストップをかけ、洗面器に濃い目に作ってある泡を塗り直す。スタジオ撮影の場合、ストロボの光が強いため、肉眼で見て大丈夫でも上がってみるとバレてしまっていることが多いので(逆にデイライトの場合は、白はトブのでバレ難い)、ほぼ一分おきの作業になる。ボトムはほとんど湯船の中なので楽なのだか、トップは両方のカップ全体を隠さないといけないので結構苦労する。元々オレは汗かきなのだが、湯船の熱に当てられて汗だくになって泡を塗る姿を見かねてか、
「上、取っちゃってもいいですよ。その方が隠すの簡単でしょう」
 里佳ちゃんが、あっけらかんと言う。
「弥生ちゃんもいいよね」
 言うと同時に、17歳の85Bカップ(推定)乳房とピンク色の乳首が目の前に。それにつられるかのように弥生ちゃんもトップをはずす。里佳ちゃんよりも大きい88Dカップ(これも推定)、ピンクの乳輪はすこし大きめだ。
(いーんですか~! こんな役得)
 至福の気分を味わいながら、オレは直接触れないように気をつけつつ、二人のむき出しの乳房に泡を塗った。
 
 最初の頃はともかく、慣れてしまえばあらかじめ裸になることが決まっている撮影では、スタッフもモデルも仕事と割り切っているので、劣情を催すことなどない。むしろ、ランジェリーやセミヌードなど、乳首や局部を露わにしないことが前提の撮影で、チラリとでも見えたりするとグッときてしまう。まして、この時のモデルは17歳で、しかも二人。通常の人生であれば、まず拝むことのできないシーンだ。その後、ヌードやハメ撮りを含め何百回と立ち会ったり、撮影したりしたが、この時ほど心の中で喝采を挙げたことはなかった。ある意味、"これぞアダルト雑誌編集者の役得"だと思う。