第7回 「ベリヲタでよかった」と、ベリヲタは言った。

【アイドル現場日記#4】2015年3月3日「Berryz工房ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!」@日本武道館(ファンクラブ特別価格8300円)


「わたしたちBerryz工房は、来年の春をもちまして、無期限の活動停止に入ります」
 昨年8月2日、中野サンプラザのハロコン昼公演で、開幕していきなり、キャプテンの清水佐紀からこの発表を聞かされたときの衝撃は忘れられない。
 それから7カ月――。容赦なく時は過ぎ、3月3日、Berryz工房は日本武道館で最後のライブをおこなった。


 Berryz工房といっても、世間的には、「ええっと、ももち(嗣永桃子)のいるグループだっけ?」というくらいの認知度でしょうが(僕も1年4カ月前まではそうでした)、活動歴はちょうど11年。グループアイドル界では最古参となる。昨年6月には、「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」という自己言及的なシングルを出し、「青春全部ささげた事は/誇りに思って生きていくわ」と歌った(つんく作詞作曲)。

 その歌詞どおり、Berryz工房は、メンバー全員がまだ小学生だった2004年3月3日にデビューを飾ってから、全員が20歳を過ぎる現在まで、途切れることなく活動してきた。過去11年間にリリースしたCDは、シングル36枚、アルバム13タイトルに及ぶ(ベスト盤4タイトル含む)。

 Berryz工房が生まれる母体となったのは、02年におこなわれたハロー!プロジェクト・キッズ(ハロプロ・キッズ)オーディション。合格した15人のうち8人が選抜されてBerryz工房となり(ひとり抜けて現在は7人)、残り7人は15カ月遅れで℃-uteとしてデビューした(現在は5人)。
 つまり、02年のオーディションに合格した小学生たちで構成された2グループが、12年半にわたりハロー!プロジェクトの中心で活動してきたが、その片方がとうとう表舞台から降りることとなったわけである。

 モーニング娘。やAKB48はメンバーの卒業と加入をくりかえしながら継続していくシステムだが、Berryz工房や℃-uteは、ほぼ同じメンバーでずっと活動している。そのため、11年前から(いや、キッズのオーディションの舞台裏がテレビで放送されていた12年半前から)彼女たちを応援しているファンも多い。そういう歴戦のベリヲタ(Berryz工房ファン)にしてみれば、Berryz工房はすでに人生の一部。活動停止したら、明日からどうやって生きていけばいいんだろうと......という嘆きがあちこちから聞こえてくる。

 僕の場合、Berryz工房の曲をちゃんと聴きはじめたのはほんの1年3カ月前。突然思い立って(というか、いてもたってもいられなくなって)はじめて単独ライブに行ったのは、デビュー10周年の当日、ちょうど1年前の3月3日だった。つまり、Berryz工房11年間の歴史のうち、リアルタイムで体験したのは最後の1年だけ。それでも、解散してからファンになるケースだってじゅうぶんありうるんだから、1年だけでも現場に通えたのはつくづくしあわせだったと思う。

 ベリ現場の特徴は、パフォーマンスの楽しさもさることながら、ベリメン(Berryz工房メンバー)とベリヲタの幸福な一体感にある。活動歴が長いので、曲によってコールのお約束が細かく決まっていたり、客の歌割り(ファンも一緒になって――ときには歌詞を変えて――歌うパート)が多かったり、振りコピ(曲ごとのダンスの身振り手振りのコピー)率が異常に高かったり。古参のハロヲタ(ハロー!プロジェクトのファン)ほど、「やっぱりベリの現場がいちばん楽しい」と言う傾向が強い気がしますね。反面、中野サンプラザ規模(キャパ2000人くらい)のホールコンサートに最適化されすぎて、新規のファンがつきにくくなっていたのかもしれない。
 いずれにしても、Berryz工房はメンバー同士の話し合いで活動停止を決断し、とうとう最後の日を迎えた。


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3月3日の日本武道館


 当日はひな祭り寒波が襲来し、凍えるような寒さのなか、グッズ販売ブースに朝から長蛇の列。メンバーそれぞれのソロTシャツとリストバンドのセット、生写真、ピンナップポスター、マイクロファイバータオルが7人分(いずれもソロ)、ラスト公演記念のパーカー、Tシャツ、マフラータオル、マイクロファイバータオル、うちわ、ポスター、ビジュアルブック......などなど、この日のためのコンサートグッズが大量に陳列されている。

 この列に並ぶ気力はないので、開演30分前に、日本武道館の看板前で同行者2人と合流。当欄第4回で書いた1月10日ハロコン昼公演のときと同じ中年書評家トリオです。ただし、今回のチケット手配は藤田香織が担当。ハロコンの中野サンプラザ1列目と交換でとってもらった座席は、東スタンド1階ファミリー席の最前列。北側のメインステージは右手に、武道館中央のサブステージは真横から見るかっこうになる(ステージの反対側、左側の南スタンド1階は関係者席で、コンサート中、℃-ute、モーニング娘。'15などのハロメンたちがサイリウムを振ってるのがよく見えました)。おお、武道館でこんないい席にすわるのははじめてかも!

 入場すると、席に着くヒマもなく、ハロー!プロジェクトの若手グループによるオープニングアクトがスタート。グループ名が発表されたばかりの研修生ユニット、こぶしファクトリー、4月にメジャーデビューするカントリー・ガールズ(の嗣永桃子抜き)、そしてJuice=Juiceがそれぞれ新曲を披露する。僕は、2月28日と3月1日に有明コロシアムで開催されたBerryz工房祭りに両日参戦して、3組とも新曲披露を観てるので、ここは冷静に通路で立ち見。

 着席するとほどなく開演時刻の午後6時になり、いよいよBerryz工房登場......かと思いきや、なかなか出てこない。なんでも、舞台裏では、プロデューサーのつんく♂がメンバーの前にあらわれて、手紙にしたためたメッセージを(喉を手術した影響か)スタッフが代読。それを聞いたメンバーが感極まって号泣したため、開演が20分遅れたという(日刊スポーツの記事より)。

 はてしなく続く「Berryz行くべぇ~!オイ!オイ!オイ!オイ!」コールのなか、ついにベリメンがステージに立つ。オープニングはド定番の6枚目シングル「スッペシャルジェネレ~ション」。
 カウントが始まると、客席を埋めたベリヲタは、間髪入れずに「スッ!」「ペッ!」の大合唱。「スッペシャルジェネレ~ション!」と1万人(推定)がイントロ部分で声を張り上げたところでベリメンの歌が始まる。Berryz工房のみならずハロー!プロジェクトを代表する曲のひとつだけに、テンションは一気にマックス。続くカッコいい系のナンバー「ROCKエロティック」でさらに盛り上がる。

 メンバー紹介VTRをはさんで、花柄ワンピースに衣裳チェンジして出てくると、かわいい系の曲を3連発。Berryz工房の楽曲資産は、主にこぶしファクトリーが受け継ぐ構想のようですが、「付き合ってるのに片思い」はぜひカントリー・ガールズに譲ってほしいですね。いやその、有明で観た「笑っちゃおうよ BOYFRIEND」と「ハピネス~幸福歓迎!~」があまりにすばらしかったので......。

 そしてMCのあとは、この公演のテーマソングともいうべき8枚目シングル「21時までのシンデレラ」。城のセットのてっぺんに上がったメンバーたちは、一瞬にして水色ドレスのシンデレラに早変わりする。
 門限に縛られる思春期の女の子の恋愛に託して、21時までしか(自主規制で)舞台に立てない中学生メンバーたちの"魔法の時間"を歌った曲ですが(2005年10月に卒業した石村舞波のラストシングルでもある)、今日のラストコンサートの終演予定時刻も21時。それとともに11年前にかけられた魔法が解け、ふつうの女の子に戻ってしまう自分たちをシンデレラにたとえる演出です。
 しかも、それに続くのが、貴方(ファン)との幸福な夢の時間の始まりを歌う笑顔いっぱいのメルヘンチックなラストシングル曲「ロマンスを語って」ですからね。ますます切なさが際立つ。



Berryz工房「21時までのシンデレラ」(2005年8月3日発売)MV


 しかし、そういうラストコンサート的な予定調和を平気で壊しにかかるのがBerryz工房。
 過去の映像をスクリーンに映してベリヲタの回想を誘い、しんみりさせたあと、まさかのモンキー衣裳(サルの着ぐるみ風)で登場し、「行け 行け モンキーダンス」を踊り狂う。2009年の秋ツアーでは「目立ちたいっ!!」のツアータイトルにひっかけて鯛の着ぐるみを着用したくらいなので、予想できたこととはいえ、まさか最後のステージでサルになるとは。ご丁寧に、マイクにはバナナつき。そして、モンキー姿の菅谷梨沙子がまた超絶かわいい。
 となりの席では藤田香織が「最後の最後にまたこんなにかわいくなるなんて......反則だよ......梨沙子」と笑い泣きしてました。
 サル姿で3曲歌ったあとのMCでも、夏焼雅が「こんなお城の前でサルの格好するなんて、ウチらだけだよね。℃-uteは絶対やんないもん」と述懐し、場内爆笑。客席の℃-uteも大笑いしながらメンバー同士で言葉を交わしてましたが、実際、こういう思いきりベタな笑いを積極的に引き受けるのがBerryz工房の個性かも(℃-uteのステージでもコント的な企画はありますが、サルや鯛までは振り切らない)。

 そしてラストスパートは、「ジリリ キテル」「なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?」「本気ボンバー!!」「世の中薔薇色」「ライバル」と鉄板曲をつるべ打ち。
 ベリヲタのコールが最高潮に達する「すっちゃかめっちゃか~」と「一丁目ロック!」で締めてアンコールに入ると、一転して静かな「Bye Bye またね」が来る構成。そして、メンバーひとりずつが、ベリメンとしての最後の言葉をファンに向かって語る。須藤茉麻が、「キッズのオーディションを受けた理由を聞かれるたびに、モーニング娘。のファンだったからと今まで説明してきたけれど、ほんとうは妹のついでに応募しただけ。当時は辻・加護の区別もついてなかった」と13年目にして衝撃の暴露をするひと幕も。

 そして、ラストシングル「永久の歌」をはさみ、ダブルアンコールで披露されたほんとにほんとのBerryz工房ラスト曲は、最後にリリースされたベスト盤ボックスに収められた最後の新曲「Love together!」。
 Berryz工房の解散をストレートに歌った歌だが、舞台下手にはグランドピアノが出現。テンポを落としてピアノ・ソロ用にアレンジしたバラード調の静かな「Love together!」を生伴奏(上杉洋史)で歌うという反則技の演出だ。
 しかも、喉を痛めている梨沙子は、いつもの力強い歌声とはまったく違う、絞り出すような、震えるような、ところどころかすれる細い声で一音一音を噛みしめながら、胸を締めつけるような泣き顔のまま歌いはじめる。いつも通りにはっきり明るく、微笑みをたたえて歌う嗣永プロとの対照の妙。客席からは、励ますように「梨沙子!」の声。交替にソロパートを歌うメンバーの名前をコールするベリヲタの声がしだいしだいに大きくなってくる。

 いやいやいや、さすがにここは静かにじっくり聞くところでしょ! そんな野太いコール入れたら台なしじゃん! と最初は思ったのに、挾雑物でしかないはずのベリヲタのコールがしだいにベリメンの歌声と調和して聞こえはじめる不思議さ。そして、最後の斉唱パートでは、客席全体がひとつになり、自然発生的に声を合わせて歌いはじめる奇跡の瞬間が訪れる。これこそまさにBerryz工房の魔法。

 曲が終わり、「11年間、ほんとうにどうもありがとうございました! Berryz工房でした!」という清水キャプテンおよびメンバーの声に応えるように、客席からも「ありがとう!」「ありがとう!」「ありがとう!」の声と拍手。それに続いて、「ベリヲタでよかった!」という魂の叫びが武道館のあちこちに響き渡る。

 現場の経験はたった1年でしたが、最後に小さな声で僕も言いたい。「ベリヲタでよかった」



「ハロ!ステ#107」より、Berryz工房「Love together!」(2015年3月3日、日本武道館)