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10月5日(土)

 9時に事務の浜田と京成本線志津駅で待ち合わせし、佐倉市立志津図書館前の"萌の広場"で開催される「本気BOOKフェス」へ。

 「本気BOOKフェス」は、ときわ書房志津ステーションビル店さんと佐倉市立志津図書館さんが主催となって、18の出版社と1つの高校の文芸部、そしてたくさんの飲食店が出店する本を中心としたお祭りだ。今回が第1回目なのだけれども、ときわ書房の日野店長から出店しませんか? とお声かけいただき、「ぜひ!」と即返したのであった。

 野外イベントなので天気がいちばんの心配だったものの、前日の雨降りはどこ吹く風、いや風ひとつないどころか10月になったというのにまさかの30度超えのピーカン照りとなり、そしてまたもうひとつ心配だった集客もオープン前から驚きの人出で、各社のブースに人だかりででき、お客さんと会話をしながらどんどん本が売れていく。

 出版業界のあちこちで図書館との協力とか学校との連携なんてお題目のように叫ばれているけれど、こんな風に実際にそのすべてが手をつないで読者のために何かができているのを初めてみた。図書館の目の前で、図書館に本を借りにきた人たちが本を買っていく。高校生は自分たちで作った雑誌をどの出版社よりも大きな声をかけて販促し、そして出店している出版社の人たちと本の話をしている。当たり前のことなのに今までほとんどできていなかったことだ。まさにこれこそが本の輝ける未来の道しるべなのではなかろうか。

 その中心にいるのが、ときわ書房の日野店長で、日野店長はタオルを首に巻き、この日のために作ったオリジナルTシャツを着て、子どもたちから「あっ、本屋のおじさんだ!」と声をかけられている。

 そんな日野店長を見つめながら、あるお客さんがこんな言葉をもらしていた。「ときわ書房は町の誇りなんです」

10月4日(金)

 朝、雨。妻と娘を車で駅まで送る。自分が家を出る頃には雨がやんでいた。

 10月の新刊『この作家この10冊 2』の書影が届いたので各所に登録。書影ができたら書影を、目次ができたら目次を、タイトルや値段が決まれば当然それらもあちこちに登録し、情報をどんどん読者に届けている。それなのに本が売れないとはどういうことだ。10年くらい前まで本の情報なんてお店に行って現物を見るしかなかったわけで、しかも本が出たことすらわからず本屋さんに行っていたのだから、果たしてどうしてあの頃あんなやり方で本が売れていたのだろうか。

 夜、早めに帰宅し、ランニング。調子にのって12キロ走ったら汗ダラダラ。10月なのに暑い。

10月3日(木)

 通勤電車。後ろに立つ女性のスマートフォンの先っぽが、私の背中にずっとくっついている。もしかして新しいiPhoneは人の背中から充電できるようになっているのだろうか。

 午前中、座談会収録。

 午後、矢部潤子さんの原稿を整理していると、内澤旬子さんから『着せる女』の著者校が届く。どちらも、一歩一歩、本に、近づいていっている。

 夜、打ち合わせ。のち、飲み会。

10月2日(水)

 営業に向かうべくお茶の水橋を渡って丸ノ内線・御茶ノ水駅に降りていくと、改札のところでランドセルを背負った制服姿の小学生が激しく泣きじゃくっている。小学1年生くらいだろうか。駅員さんに必死になにか訴えているものの嗚咽しているので言葉にならない。

 不審者に襲われたのだろうか。それともお母さんに渡されたキッズ携帯でもなくしたのか。娘が小さなかった頃の姿が重なり、胸が締め付けられる。

 ホームの端に立ち、しばらく様子を見守っていると、同じ制服を着た女の子が二人やってきた。友達だったのか泣きじゃくっていた女の子は、二人の元に駆けていった。そして改札を通り、反対側のホームに行くために階段を三人並んで降りていく。もうその顔に涙はなかった。

 取り残された駅員さんと私は無事解決したことに胸を撫で下ろし、私はやってきた電車に乗って営業先へ向かった。いじめじゃないといいんだけれど。

 そういえば娘があんな風に泣いたのはいつが最後だっただろうか。

10月1日(火)

 朝、セブンイレブンで2リットルの水を買い求めると「お持ち帰りですか」と尋ねられる。消費税10%へ。以前5%から8%に上がったときは、確か文庫などの低価格の商品が非常に落ち込み、そのまま文庫は前年割れを続けているような気がするのだけれど、果たして今回の増税は本や雑誌の売上にどのように影響するのだろうか。

 午前中は、昨年より青土社のエノ氏よりお声掛けいただいた6社合同フェア(青土社、みすず書房、白水社、創元社、晶文社、本の雑誌社)「読書週間フェア」の出荷準備。倉庫の人が混乱しないよう出荷指示書作りに勤しむ。

 一段落ついたところで昼飯のバナナを頬張りながら、今度は週末志津にて開催される「本気BOOKフェス2019」の出店準備。先週末、奈良図書情報館でおこなれた「さほがわ秋のほんまつり」に出張出店し、たくさん本を売ってきた編集の高野より秘伝を教わる。「本をきちんと並べたらいけません。ぐちゃぐちゃに置くんですよ」

 午後、営業へ。ひとまず先週オープンした日本橋の誠品書店を覗き、ほとんど面陳のない棚ギッシリの本に驚く。そうか台湾の本屋さんは面陳ないのか。

 千代田線から常磐線を営業。どちらのお店でも11日後に発売となる「12国記」シリーズ最新刊の話題で盛り上がる。問い合わせも多く、予約もずいぶん上がっているようなので、これは久しぶりのお祭りになりそう。しかしその影で妙に話題になっていないノーベル文学賞。こういうときこそ村上春樹が獲りそうな気がするがどうだろうか。

9月30日(月)

 本の雑誌スッキリ隊出動のため、朝8時半に高場馬場へ。久しぶりに通勤時間帯の埼京線に乗車すると、各駅停車に関わらずすごい混みようで本も読めず。すっかり京浜東北線に慣れた身からするともはや息もできない。笹塚通勤時代は毎日これに乗っていたわけで、当時の私はおそらくラガーマンなみに屈強だったのであろう。

 痴漢しようとしてる挙動不審な若者を発見したので、ロックオンされている女性との間に入ってガード。朝からコーナーキックのポジション取りの練習になる。

 高田馬場駅よりスッキリグリーン(立石書店岡島さん)の運転するワゴン車で静岡県富士市へ向かう。本日の整理は雑誌と写真集などが多いらしい。着いたお宅は12階建てのマンションの8階。エレベーターが点検中だったらどうなることかと思ったのだが、しっかり動いていたので一安心。依頼者のお部屋は3方の壁が本棚で囲まれる夢の部屋。我が家も子どもたちが出ていったらこういう部屋を作るのだ。

 スッキリ隊もすっかり分業ができており、スッキリブルー(浜本)が依頼者の話を聞き、イエロー(古書現世向井さん)とグリーンが整理する本や雑誌をどんどんビニール紐で縛っていく。そしてレッドである私が運んでいくのだが、気づけば汗をかいているのは私ひとりなのであった。まあ、しかし身体を動かすのは頭や口を動かすよりずっと気持ちがいいし、すべての本を運び終えたときの満足感たるや、これぞ「仕事」というものだ。

 すでにある程度段ボール箱に入れて整理していただいていたおかげで、一時間ほどで作業は終わる。果たしてどんな査定金額になるかは帰ってからのお楽しみ。

 その後、静岡に来て食わずにおけない「さわやか」にて250グラムのげんこつハンバーグを食す。スッキリイエローが食後すぐに「明日も来たい」と叫ぶほどの大満足。

 夕刻、高田馬場に戻り、直帰。

9月29日(日)

 朝4時に目覚める。昨夜は薬が効いて21時には布団に入っていたので十分寝た。目をつぶってももう眠れないだろう。読書灯をつけ、枕元にあった奥田英朗『罪の轍』(新潮社)を手に取る。

 12時過ぎ読了。気づけば一度も本を置くことなく597ページ読み切ってしまった。本を閉じて初めて腕が痛いことに気づく。圧巻。なんだろうこれは。

 読み始めてすぐに犯人がわかってるというのになぜこんなに引き込まれてしまうのか。ストーリーだって想像できるし、それなのにそれなのにページをめくる手が止まらない。そして読後のこの満足感たるや。

 2019年のエンタメ小説界は、横山秀夫の『ノースライト』と奥田英朗の『罪の轍』を読まねば語れまい。"Wヒデオ"の年なのだ。

9月28日(土)

 昨夜は喉が痛くて夜中に何度も咳き込みほとんど眠れず。今週一週間嫌な予感がして市販の風邪薬を飲んでいたのだけれど、48歳ともなるともうそんな柔な薬では回復できないのであろう。受付開始とともに近所の病院に駆け込み診察。

「喉が真っ赤ですね」と口の中を覗き込んだお医者さんが驚く。そりゃあレッズサポですから。ここんところ埼スタで叫んでばかりで喉が休む暇もないんです。大量に薬を処方いただく。

 ランニング15キロ。見沼代用水西縁に曼珠沙華が咲き誇る。

 DAZNで浦和レッズ対サガン鳥栖を観戦。2対0からまさかの2対3と逆転され、そしてアディショナルタイムにPK獲得。チームメイトからボールを託されたのは先日の試合でPKを外し、サポーターからボロクソに批判された杉本健勇。

 残留争いのライバル・サガン鳥栖に勝ち点3を積み上げられるのと、互いに勝ち点1を得るのでは今後の展開がまったく違ってくる。杉本健勇の責任は天皇杯以上に重大だ。テレビの前で正座し、両手を合わせ、祈る。杉本健勇が魂のキックでボールをぶち込み、3対3の引き分け。ちょっと涙がこぼれる。

9月27日(金)

  • ヴィータ ――遺棄された者たちの生
  • 『ヴィータ ――遺棄された者たちの生』
    ジョアオ・ビール,トルベン・エスケロゥ,桑島 薫,水野 友美子
    みすず書房
    5,500円(税込)
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  • ポバティー・サファリ イギリス最下層の怒り (新書企画室単行本)
  • 『ポバティー・サファリ イギリス最下層の怒り (新書企画室単行本)』
    ダレン・マクガーヴェイ,山田 文
    集英社
    2,640円(税込)
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    honto

 某所より図書カードをいただく。浦和っ子は宵越しの図書カードは持っちゃいけねえということで、早速帰宅時に丸善御茶ノ水店さんに寄って図書カード一万円お買い物に挑戦する。

 まず何よりも、2019年中にこの本を買うため貯金箱にこそこそ百円玉を放り込んでいた『ヴィータ 遺棄された者たちの生』(みすず書房)に一直線で向かう。もしこの本に手垢がついてるとしたら、それは私がこれまで何度も手に取り、眺めていたからだ。ブラジルの保護施設に収容されたカタリナに耳を傾けられたエスノグラフィー。半年前から欲しかった本をついに我が家に連れて帰ることができてうれしい。一冊で5400円。10月1日を過ぎたらなんと5500円。

 そして次に向かったのは、奥田英朗『罪の轍』(新潮社)。先日会った高野秀行さんが絶賛していたので、やはりこれを読まねば2019年のエンタメ小説は語れない気がする。

 なんとたった2冊で7000円を超えてしまったではないか。できるなら1冊でも多くの本を買いたいと新書売り場や文庫売り場をうろつくも吸い寄せられるようにして見つけたのは、ダレン・マクガーヴェイ 『ポバティー・サファリ』(集英社)。このテーマの本はいつも即買いしているのであった。

 というわけでレジに向かうと3冊で9936円。ほぼ図書カードを使い切り大満足で帰宅する。

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