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勝手に目利き
単行本班
文庫本班
「ぼくは静かに揺れ動く」
【アーティストハウス 発行角川書店発売】
ハニフ・クレイシ
本体 1,000円
2000/07
ISBN-4048973037

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  小園江 和之
  評価:D
  あたりまえのことだが、同じ時代を生きて同じものを見てきたからといって共感できるとは限らない。訳者は「ラスト・シーンでは深い感動に襲われ、思わずおいおいと泣いてしまった」と書いてるけど、著者と同年齢である私にとっては医学書のように退屈な本だった。数頁読むごとに眠くなり、院長室の椅子からずり落ちること三回、ベッドからころげ落ちること二回、悪戦苦闘の末なんとか読了した。ただまあ「どんな女性であれ、その女性のことを真剣に考える前に男はマスターベーションをすべきだというぼくの仮説を試してみることにしよう。そうすることで、自分がセックスのために彼女を求めているのか、あるいはただそれだけのためではないのか、確かめることができる」てぇのは真理だと思うので、Eにしたいところをワンランクアップ。

 
  唐木 幸子
  評価:B
  人生の意味について真剣に思い悩んだ人々に送る最高傑作、という紹介文に期待したのだが、3分の1くらい読んだところで、もしかしてこの男が家を出て行くのは最後の1ページかと想像が付いて、そんなに妻がいやなら決然と早く出て行け、大体、思ってることとやってることが違うじゃないか、と溜息が出た。
思索とは、適確な時期になされてこそ意味のある行動なのに、この男は何度もあったやり直しのタイミングを自ら逸して(最初の子供が産まれる時でさえ、既に愛人がいたのだ!)、妻と正直に向き合うことをしていない。思い悩むのではなく、甘えだ、これは。
訳者のあとがきに、「男として100%理解できる」「共感を抱く男性は数多くいる」「男とはそういうもの」などと書かれているけれど、ほんまか? 怒る男の人、いてくれよ。
・・・・・という感想とは裏腹に、妙に心に残る1冊なので、B。

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