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  2000年のゲームキッズ 「2000年のゲーム・キッズ」
  【幻冬舎文庫】
  渡辺浩弐
  本体533円
  2000/10
  ISBN-4344400399
 

 
  石井 千湖
  評価:B
  腰痛で病院に行った。レントゲン撮って待ち、診察して待ち、会計でも薬でも待つ。しかもいつ呼び出されるかわからんし、何度も移動させられる。そんな時読むのにピッタリの本だ。まず科学技術の解説が扉のページにあって、それをネタにした小説が続く。お気に入りは皮肉なオチがきいてる『天職』『柔和な人々』『育てゲーム』など。特に『柔和な人々』は世の中すべて同じ感情の人しかいなくなってしまったらどうなるか?というコワーイ話。どんなに平和な社会でも必ず差別による排除が生まれるのね。ヘッドギアという小物も嫌な感じ。残酷だけどドライだし、イライラもすっきり。病気のときにブラックユーモアというのもなかなかオツなものだ。

 
  内山 沙貴
  評価:D
  「夜、トントントンと扉を叩く音がする。お客かな?と思って扉を開けるが外には誰もおらず、おかしいな、と思いながらも部屋に戻る。――そんな経験ありません?しかし、このまま放っておいちゃ行けない、扉を叩くものの正体を見極めるまでは、これは、警告なのかもしれませんしね。特に最近はジョウホウって奴が夜、一人歩きする時代ですから、姿が見えないから誰もいない、大丈夫だなんて思っちゃいけない。奴は虎視眈眈と我々のことを狙っているのかもしれませんよ、一瞬で人を消せる "リセットボタン"を携えて」これからの未来は予測できそうで予測できない。今より良くなるのか、悪くなるのかは多分、後にならないと分からない。少し怖い気がします。

 
  大場 義行
  評価:C
  最初はなんだこれ、という感じだったが馴れてくると、妙に嫌な嗤いがでてしまう。嗤っちゃいけないと思いつつも、嗤っちまう。しかもそれはホラーに近いというか、余りにもブラックな厭な嗤い。ただ、内容は星新一のショートショート現代版。焼き回し。培養臓器、仮想生活空間、地下都市、バーチャルシティ。星新一もSFに傾倒していたので、全く同じと云ってかまわない。ただ今風なだけだ。2000年のゲーム・キッズはすんなりのめり込めたのかもしれないが、1990年のゲーム・キッズの為 か、馴れるのに時間がかかった。おじさんのパソコン嫌いと同じだ。少々オヤジになったのかと、今、愕然としている。

 
  操上 恭子
  評価:C+
  電脳をテーマにしたショートショート集。各話ごとにタイトルとその話のテーマの簡単な説明があるのだが、その他に翻訳書のように英文タイトルがついている。この英文タイトルが、直訳の物もあるが、なかなか意味深で面白い。SFショートショート、しかもかなりブラックな物ということで、初期の筒井康隆を思いだしながら読んだ。ただし、筒井作品は「そんなことは起こるはずはないが、あったら怖いよなぁ」というシニカルな笑いを含んだものであったのに対し、ゲームキッズは「もしかしたら、こんなことが本当にあるかもしれない」というホラー的な、肝の冷える笑いを提供してくれる。これもひとつのIT革命なのだろう。

 
  小久保 哲也
  評価:B
  星新一亡きあと、この分野の作品は、どうも読む気がしなかった。だけど、本書に収められたショートショートの持つ、気持ちよく予想を裏切る結末は、なんだかとても懐かしく、心地よい。非常にオーソドックスな構成のものから、心を打つ作品まで、ショートショートという作品を十分に楽しませてくれる。ただ、題材が近未来のものを扱っているせいで、非常に既視感を感じて面白いのだけど、ショートショートとしての作りが上手いだけに、時間とともに錆びていく題材を使っているのが惜しい気がする。今後は注目していきたい、楽しみなショートショート作家である。

 
  佐久間 素子
  評価:B
  現実となりつつある科学技術の近未来をえがいたショート・ショート集。各編の扉には、作品にちなんだ科学用語の紹介があり、現在ここまで可能、という知識を提供してくれる。想像力があおられて効果倍増だ。一編読むたびに、これは陳腐(第30話)とか、オチまるわかりだろう(第6話)とか、悪口をいってみたり、そうくるか!(第11話)とか、実際あるかも(第23話)とか、見事作者の術中にはまってみたりと、ずいぶんと楽しむことができる。全編読んだあとは、何となく不安な気分におちいって、じんわり怖くなってくる。楽しさから不安への落下の感覚が奇妙でくせになる。

 
  山田 岳
  評価:A
  タイトル、表紙絵はともにB級だけど中身はA級。本気で売る気があるんかいな?この本の編集者は。椎名誠のファンというだけでこのホームページを開いたあなた。読んでごらんよ、この本。おもしろいよう。ショートショートってのはね、ひとつのお話が5ページくらいで終わってしまうの。読むのがおっくうになる前におわってくれるんだ。おまけに最後にかならずオチがある。だからこの本1冊で34回の「くすっ」を楽しめちゃうんだ。しかも読み終わったときには「臓器培養」だの「バイオ・ファクトリー」だの最新ハイテク用語の意味がすっかり頭に入っている。それでこのお値段!お買い得だよ!

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