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  酸素男  酸素男
  【ハヤカワ文庫NV】
  スティーブ・ヤープロ
  本体840円
  2000/10
  ISBN-4150409684
 

 
  大場 義行
  評価:A
  「昔からいつも、生来の自分とは違うものになりたいと思ってきた男」酸素男はそんな男だ。しかし、男ならそう思うのは当たり前なのではないだろうか。少なくとも自分はこの主人公に共感した。もう一人の主人公は酸素男の妹。彼女も同じような境遇なのにまた中身が違う。傍観娘なのだ。これは一緒のようで違う。そして、こんな二人を主人公に据えたこの物語は不思議な緊迫感に包まれている。徐々に空気を送り続けられて、ゆっくりと膨れ上がる風船を想像してしまった。酸素男と傍観娘、そして周囲の人物の関係が、徐々に判り、そしてその時には風船がぱんぱんになっている。このタイミングが絶妙だ。兄妹のキャラクターと物語の進ませ具合。どれをとっても傑作だと思うのだが、どうだろうか。

 
  小久保 哲也
  評価:C
  南部アメリカの黒人と白人、貧富の差を背景にした白人同士の関わり合い。そういった、私たちには普段触れることのできない、やり場の無いような圧力というものが、ひしひしと伝わってくる。だけどそれよりもまず、なまずを養殖しているという事にびっくり。それに加えて、養殖池の酸素値を計り通気装置を動かすという仕事があることにも、またビックリ。異文化との遭遇と言うと大袈裟すぎるとは思うけれど、本当に驚くようなことが世界にはまだまだあるのだなぁと、しきりに肯いてしまう。それはただ単に私が無知なだけなのだけど……。

 
  山田 岳
  評価:B
   忙しくて時間のない方には、あまりおすすめできません。たっぷりと時間をとって、かみしめるように読んでください。「高校時代は甲子園にも出たけど、今はしがないサラリーマンさ。ふっ」という人は泣けてくるかもしれません。「学生時代はオレの方がアタマよかったのに、なんでアイツがオレの上司なんだ!」と憤るあなたの心も、やさしく癒してくれるでしょう。そんな話ですから、冒頭からおもしろおかしく話がすすむなんてことはありません。むしろさえない今のじぶんを見せつけられているようで嫌になるかも。それをぐっとこらえて読みすすめていくと、じわじわっと人生の味がひろがりますよ。

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