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  アンダードッグス  アンダードッグス
  【文春文庫】
  ロブ・ライアン
  本体 733円
  2000/10
  ISBN-4167527618
 

 
  石井 千湖
  評価:A
  シアトルの地下にある廃虚が「不思議の国」に。兎と呼ばれるケチな悪党ヒルトン(姓は粗チン!)がアリスという名の少女を人質にして暗闇をひたすら逃走する。アンダーワールドにあらわれた闖入者を出迎える怪しげな住人。ビ チグソ湖があったり夥しい数の鼠がいたり読んでるだけでも臭いが伝わってきそう。地下世界をしきっている「警部」がいい。浮浪者風なのだが警官の制服 を着ていて追われているふたりを何故か助けてくれたりする。独自の哲学を持ったかっこいいオジサンなのだ。逃げるふたりと追う人間の攻防は緊張感 タップリ。ヴェトナムでのトンネル戦の回想も迫力アリ。現在の地上と地下、過去の回想が交互に来て視点もクルクル変わるので最初は少し読みづらく感じたけど、徐々に盛り上がっていってついに一気読み。

 
  内山 沙貴
  評価:E
  シアトルは以前大火災で壊滅し、その復興の際に地面を一階分高く再建した。つまり今まで二階だったところが一階となり一階だったところは地下に潜った。地下におかれた一階部分はそのほとんどが使い物にならない残骸だったが、中にはまだ原型をとどめる家屋やストリートが残っている。そしてそこに人が棲んでいる。その中で繰り広げられる、ひとり芝居の追いかけっこ。そこに迷い込んだ人々は、闇に追われ、光を追い求める……ぞくぞくするような設定だと思う。しかし、この本の文章は(云い回しが難しいのか)すんなり頭に入ってこなくて非常に疲れてしまった。私の読み方が悪かっただけかもしれないが。

 
  大場 義行
  評価:AA
  シアトルに以前あったという地下廃墟で追われるモノ、追うモノ、いりみだれての乱戦小説。この乱戦ぶりがたまらない。「不思議の国のアリス」を下敷きにした暗黒小説なのだが、とにかく、面白い。面白すぎる。最初は多めの登場人物の説明 でちんたらと、乱戦が始まるにつれてスピードアップ。最後はもう凄まじいスピード感。個人的に誰もが理由をもっており、そしてその為にどつぼにはまっていくという物語が 大好きなのだが、その中でも本書は飛び抜けている。忌まわしい過去を振り切 る為に、復讐の為に、旦那と己の為に。シアトル伝説の殺人鬼までもいりみだれて読み応え抜 群だ。誰もが皆悪いワケではなく、誰もが必死に生きようとしている。阿呆な小説のようだが、最後は切ない。特にトンネルソルジャー。彼の過去は切なすぎる。早くロブ・ライアンの次作が読みたい!

 
  操上 恭子
  評価:B
  まず最初に断っておくと、解説や訳者註で執拗に出てくる『不思議の国のアリス』云々は気にしない方がいい。物語の筋になんの関係もないからだ。それぞれに複雑な事情をかかえる、多数の登場人物たち。バラバラの断片に見えるそれぞれの物語がだんだん一ケ所に収束していく。と書けば、よくある 手法だと思うだろう。だが、この話ではその「バラバラの断片」があまりに小さい。特に前半は、5ページくらいごとにどんどん場面と登場人物が変わり、混乱するし集中できない。それでも、我慢して読み続けてもらいたい。大丈夫。バラバラだった断片 は、だんだんまとまってきて、読みやすくなっってくる。そして意外な事実……。きっと、最後まで読んで後悔することはないはずだから。

 
  小久保 哲也
  評価:D
  プロットはなかなかよく考えられている。シアトルの地下迷宮に逃げ込んだ男と、人質にされた少女をめぐって、警察、テロ特殊部隊等のさまざまな思惑が絡み合っていく様は、映画をみているような緊迫感がある。だけども、非常に読みにくかった。一度読んだだけでは意味がよくわからない文章がたまぁにあり、そのたびに読む速度が落ちてしまう。一度それが気になり始めると、ひとつひとつ文章を確かめながら読んでしまうので、なかなか集中できない。中盤から最後までは、あっという間に読み終わってしまうくらい 吸引力があるだけに、そういった文章の乱れがなければ、と非常に残念に思う。

 
  山田 岳
  評価:C
  舞台はアメリカ・シアトルだが、著者はイギリス人。イギリスの作家は導入部を長くつづる傾向があるが、ロブ・ライアンも例外ではない。ひとりの男を警察、ベトナム帰りの元兵士、対テロ特殊部隊そしてマフィアが追いかける ことになるのだが、それら一つひとつを丹念に描いていくものだから、50ページをすぎても事件が始まらない。役者も全部出そろってはいない。この長い導入部をのり切れるかどうか。マリナーズの話は欠かせないシアトルの気風 はわかるけど。長いといっても、映画のように短いカットをつみ重ね、話のテンポもいいので、さほど気にはならない。通勤電車の中で読むのにいい作品です。

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