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      「ダイブ!!2」

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    【講談社】
  森絵都
  本体 950円
  2000/12
  ISBN-4062105209
 

 
  今井 義男
  評価:A
  第一巻でも感心したことだが、これほど地味な競技を取り上げてもなお読者の興味を惹きつけてやまない森絵都の筆力にはおそれいる。待望の第二巻では圧倒的な存在感を持ちながら行く手を壁に阻まれた野生児、沖津飛沫が再びコンクリート・ドラゴンに戻る決心をするまでが描かれている。飛沫の祖父にまつわる挿話と、恋人恭子との青森での生活を実に細やかな文章で読ませる。天才肌で他を思いやる気持ちも忘れない要一と、失恋を吹っ切ったことでややキャラが砕け気味の知季との交流を通じて、飛沫の個性もますます立ち上がってくる。ここへきてようやく三人の目指す方向が示された。作者の眼差しは挫折する陵やレイジの陰影もさりげなくすくい取る。まだ誰の物語も終わりを告げられてはいないのである。

 
  原平 随了
  評価:B
  『DIVE!!』第一巻の〈新刊採点〉で、第二巻が待ち遠しくてならないと書いたのだが、第二巻である本書は、第一巻と比較して、物語の運び、キャラクター共に、ちょっと生彩がないように感じた。最も気になったのは、主役が交替したという点である。当然、全体の構成を睨んでのことだろうから、ということは、何と!『DIVE!!』は、各巻で主役の交替する群像劇だったのか(……たぶん)。それが作者の意図なら、それはそれでもちろん構わないのだけれど、しかし、全巻をまとめて読むことができない以上、結果として、読み手の心情移入はぶつぶつ断ち切られてしまう。だとすれば、こうゆう形の出版方法には、少々、疑問が残るのだが……。ともかく、主役交替のせいもあって、前半、ややかったるい流れも、今回の主役である沖津飛沫が故郷に帰ってからの後半部分では、魅力的な新キャラクターなども登場し、それなりに勢いを盛り返すし、ダイビングというスポーツを、別の観点から捉えようとする試みもあり、今後、本作がどのように展開するのか、まだまだ期待は残っている。ということで、第三巻が待ち遠しい……(と、一応、書いておこう)。

 
  小園江 和之
  評価:C
  あれれ、完結編にしちゃ薄いなあと思ったら続刊が七月に出るんだそうです。で、中身の方はアジア合同強化合宿の選考会からはじまるんで、結果を書いちゃうとネタバレなんであれなんですが、今回はですね、前巻では脇役みたいだった沖津飛沫にスポットが当てられてるんですね。彼自身が気付いてなかった、天性の「華」と、それにギャラリーが魅了される瞬間、心中にわき上がる快感といったものが描かれるんですな。まあなんというか、どんなにテクニック上の才に優れていてもこの「華」ばかりはどうしようもない。ただ現行のダイビングの採点法になじむかどうかは別の次元なので、そのあたりは次巻で展開されていくのでしょう。とまれ、ただのスポ根とはひと味ちがうと思います。

 
  松本 真美
  評価:B
  清々しい<DIVEワールド>の続きが読めてうれしいな。1も好きだったが、どこかよくも悪くもあだち充っぽいかも、などと思った。が、今回はその印象は払拭されたよく悪くも…ってしつこいな。いいのか悪いのか、はっきりしろ私!予測を半歩ずらした感じの展開が心地よい。今回の主人公沖津飛沫(しぶき…かっこいい名前だ)の物語の中でのポジション、及び、飛び込みに対するスタンスの変化も意外かつ自然。わざとらしくなく、よどみない流れで話が進むので、気安くどんどん読んじゃうが、この作者、すごいと思うな。1では、飛び込みという競技自体の知られてなさ具合が、物語を新鮮でストイックに見せたのか、と思ったが、オリンピック後もその印象は変わらなかった。見るのが好きになりました、飛び込み。

 
  中川 大一
  評価:C
  ソフトカバー、950円、190ページちょっと。大きめの活字、多めのルビ。こんなこと、枝葉末節かもしれない。でも大切な要素だと思う。おかげでさくさく読めて、次が待ち遠しく感じられるんだから。全巻そろえたら結構高価で厚い本になるんだろうけど、そんなに抵抗ないよね。これもマンガ的手法の応用だろう。本巻では、前回サブ的位置にいた沖津飛沫(人名だよ)がぐっと前面に出て、知季は充電中。それが次回への興味をつないでいる。3巻では知季が大ブレイクするんじゃないかって。上手なお話しだけど、「大人の読者も堪能できる」(北上次郎)とは思わないんだ。本シリーズはやはり若者向き。私のような中年はいまいちのれない。それで本書の価値が下がるわけでは、ないけれど。

 
  唐木 幸子
  評価:C
  前巻では知季だった主人公が、今回は飛沫に変わっているのを知って、私は直ぐに理解した。これが下巻で終わりじゃないのだ。第2巻だったのね。来年夏に第3巻が出るらしいが、そこでは要一が主人公だったりして。登場人物の中で私は、この冷静沈着な要一が一番の気に入りなのだ。しかし、この調子ではオリンピックに行くまでまだまだ遠そうだ。5巻くらいまでは行くかもしれんぞ。他の課題本と違って1時間くらいで軽く楽しく読めるので私はそれなりに気に入っているのだが、これ、児童文学というジャンルで良いの? だって、腰を痛めて故郷に戻ったはずの選手が恋人と同棲して毎晩抱き合って、、、、なんてシーンも出てくる。今の小中学生はこんなの当然なんだろうか。別にいいけど。

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