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      「終極の標的」

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    【早川書房】
  J・C・ポロック
  本体 1800円
  2000/12
  ISBN-4152083212
 

 
  今井 義男
  評価:B
  これぞ英米ミステリのお家芸である正統冒険小説。なんといってもあちらには巨悪の権化のような組織がいくらでも控えているのだから、国産では端から太刀打ちは無理である。内閣調査室や陸幕二部別室ではいかにもスケールが小さいし、ネームバリューも今ひとつだ。本作で偽札製造という無茶なことをやっているのは謀略界のスーパースター、米CIAである。偶然その偽札を手に入れてしまったために命を狙われる羽目におちたのはデルタ・フォースの元隊員。追う方も追われる方もプロ中のプロだ。細かいことを気にしなければ派手で映画的な立ち回りを堪能できる。惜しむらくはヤンキー気質丸出しのエディーに大暴れするチャンスがなかったことである。私は苦境に立たされても口の減らないキャラクターが大好きなのだ。

 
  原平 随了
  評価:D
  偶然、目の前に落っこちてきた(文字通り、落っこちてきた)二千万ドルを、偽札と気づかず、親友と二人でネコババしてしまった米国特殊部隊の元隊員が、CIAやら、シークレット・サービスやらに追われることになる。出だしはなかなか快調だ。が、その後の展開は実にシンプル、あっけらかんとした痛快娯楽アクションである。親友が殺され、男は、親友の妹(これがまた、元麻薬取締局局員のタフな女で)と共に敵討ちに立ち上がるのだが、親友を失った心の痛みとか、そんな、活劇を停滞させるような描写は一切無し。敵もまた、派手なアクションに奉仕するためだけのような存在だ。男女二人が主役なのに、恋愛の気配がまったくないというのも、これまた徹底している。というわけで、とりあえず楽しめる一冊であることは確かなのだが……。

 
  小園江 和之
  評価:B
  アクション映画におけるA級とB級の線引きってのがどのあたりにあるのか、私にはよく分からないんですが、これをどう料理してもA級映画にはならんと思います。しょっぱなから最後まで、ドンパチのオンパレードで、果てはスティンガー・ミサイルまで登場するとなると、こりゃもう何でもありですね。でもこういうのがあっても不思議でなさそうなのが今の米国だって気もしますが。テンポの良さは抜群で、ストレスなくだだーっと読めます。とってつけたような濡れ場もなく、そこがまた潔くてマル。本書の主人公って、実はジャネットさんじゃないかって気がするんですがねえ。だって一番かっこいいもの。

 
  石井 英和
  評価:B
  ポンポンとたたみかける文章が快く、また、短く章を切る場面転換もスピ−ディで、その疾走感に煽られ、一気に読まされてしまう。普通のアクション小説なら銃撃の応報で済むところが市街戦の様相を呈したり、ミサイルが担ぎ出されたりの「やり過ぎ傾向」には笑ってしまったが、戦闘場面の迫力はさすがだ。銃器、あるいは科学捜査の現場など、メカニックに係わる描写も恰好いい。すべては「戦場の論理」で描かれており、登場人物が肉親の死に涙する場面はあれど、戦闘場面における死は記号に過ぎず、ためにバタバタ人は死んで行く。文学コンプレックスのかけらもない、その姿勢がいさぎよい。(身も蓋もない、という話もあるが)なお、中身は希薄なくせに量だけはある辞書的厚みの小説本の氾濫する昨今、本書の「薄さ」は、爽やかだ。支持する。十分だよ、これで。

 
  唐木 幸子
  評価:B
  2千万ドルの偽札を積んだ飛行機が墜落する冒頭から、そのままアクション映画になりそうなシーン続出だ。戦友エディを惨殺されたスタフォードと、エディの妹のジャネットが組んで陰謀に挑むのだが、この2人が強いこと強いこと。CIAやシークレット・サービスが間抜けに見えるくらいの戦闘能力と冷静さで、冒険小説の主人公として文句の付けようがない。ジャネットは射撃も格闘も、特殊部隊出身のスタフォードを凌ぐくらいだが、料理になると材料を切って混ぜるだけのツナサラダも作れない、すごい!女だ。しかし、見とれた男が電柱にぶつかって気絶するくらいの美しさも持っている。このジャネットの魅力だけで最後まで一気読み出来る満足の1冊だった。

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