「猫背の王子 」 評価:A 主人公の王寺ミチルは潔く、どこかはかなくて、危険だ。この物語はその女の子にヒビが入り、パリンと美しい音を立てて、割れる。そんな物語だ。しかし破滅に向かっていくワケではない。劇団に対する熱い情念。女に対する淡い情念。自分に対する冷たい情念。とにかくそれら全てが力強い。何処にむかうにもとんでもなく力強いベクトルを持つ、この主人公は余りにも魅力的に見えた。他の登場人物にも惹かれる。初主演を演じるために必死に生きる女。裏切りと葛藤する男。捨てたはずのものに涙する女。魅力的な登場人物、女と女、女と男、夢と幻想、破滅と再生、なにもかもごちゃごちゃとなって不思議と光る物語だ。ストーリーが無いといわれればそれまでだが、それでも様々な魅力が活きていて、読ませてくれた。