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不機嫌な果実
【文春文庫】
林真理子
本体476円
2001/1
ISBN-4167476215
石井 千湖
評価:D
不愉快なのに読むのが止められないのでございます。モテないわたくしから見ると主人公の麻也子はイヤーな女です。彼女は容貌に自信があり、自分にあまり興味を示さなくなった夫が不満でちやほやしてくれる男を探すのです。キープしておいたつもりのエリート弁護士はマヌケな結果に終わり、昔の恋人のいまどきバブリーなオヤジでとりあえず手をうちます。スカした店の常連で高学歴のお坊ちゃんか出世したひとであれば麻也子はセックスさせてくれます。海外生活などもできるとよいでしょう。薄っぺらな女の薄っぺらな自意識は「上品」を好みます。敬意を表してこんな文体にしてみました。ケッ。不倫に憧れを抱かせないのである意味「倫理的」ではありますが。
内山 沙貴
評価:B
どこまで世間体を気にすれば済むのか。これだけもてあそばれた男はどう思う?なんのプライドなのかよく分からない。『今こそ人生で一度やりたくてたまらなかったことをするのだ。』ドラマの見過ぎとしか思えないセリフ。読み始めはこの世界の価値観のいい加減さ、主人公のアホさ加減にイライラした。が、その高めのハードルを全部蹴り倒して平地にぬけると、面白さが分かるかもしれない。繊細で複雑な現実の感覚をマヒさせて、ワンパターンで一次元な行動しかとれない主人公に自分を同調させてしまえば、いい、うん、悪くないと思った。この本が許せるか否かは読む人の許容範囲の問題だろう。ただ、この話に本気で共感する人は、気を付けた方が良い。この本の主人公みたいにならないように。
大場 義行
評価:D
単行本が発売されたのは1996年。この頃だったらもしかすると面白く読めたかもしれない。最近の本と比べてしまうと余りにもインパクトに欠ける。どうしてこんなに文庫化に時間がかかったのだろう。それだけではなく、圧倒的になにかがこの本には欠けている気がする。それが何かよくわからないが、その為に不倫と云う出来事の最初から最後までのレポートとしか読めなかった。もしかしてもっと激しくどろどろの方が読みたいのか、俺?
操上 恭子
評価:E
林真理子は、エッセイは面白いんだけどなぁ。なんで小説になると、こんなに読むのが苦痛なんだろう? その理由を考えてみた。エッセイならば、どんなことが書いてあろうと「まあこんな人もいるかも知れないよな」と納得することができる。それにエッセイを書いている林真理子は、ワガママで思い込みも激しいが、ちゃんと自立した人間に見える。それなのに、なぜ林真理子の小説に出てくる女は、どんな夫や恋人を持つかということだけが自分の価値基準だと思っているのか。なぜ自分の足で立とうとしないのか。 実際に私のまわりには、そんな女は一人もいない。渡辺淳一の描く女性像なら、まだ「おっさんの妄想」として理解することもできる。だが、林真理子のは……
小久保 哲也
評価:E
とりたてて珍しくも無い視点と、ありきたりの物語の展開は、読みやすい文体とあいまって、印象に残らない。どこにポイントがあるのだろうと、考えてみたがさっぱりと浮かんでこない。それなのに、なにか懐かしい気持ちがする。そうなのだ。昔やっていた、昼メロの世界だ。特に難しく考えることも無く、見終わったらさっさと家事に取り掛かれるそういう内容だ。お昼に読むには、軽くてちょうどいいかもしれないが、他に読みたい本はいくらでもあるのだっ、という人には、物足りないだろう。
佐久間 素子
評価:D
何だこりゃ寓話か?ちがうよなあと考える。著者の書く欲望は、それはそれはわかりやすい形をしていて、綿々とえがかれるものだから、感心をとおりこしておかしくなってくる。節々で共感してしまう自分もあって、そのあたり、うまいのだろうけれど、小説としておもしろいかどうかとは、また別の話だ。とにかく、これほど幻想も官能も感じさせないくせして、恋愛小説(しかも不倫)のパッケージなのだから怖い。バブルの恩恵をしっかりうけて育った林真理子ワールドは、もうほとんど別の文化圏という感じだ。
山田 岳
評価:E
つ、つらいは’なしや、お’とこには。おなごはんはき’っと「そうそう! そうなのよ!」と言わはると思いまんのやけど。お’とこは、会社でリストラにおびえ、い’えでは「不機嫌な果実」を読んではる嫁はんにおびえ、こ’んなんでは、世’の中、ちいっともようなって行きまへんで。 「恋愛小説の最高峰」でっか? お’んなのおらん世界に行きとうなってきた・・・。
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