「ハドリアヌスの長城」 評価:B 絶え間なく流れて行く文章から立ち上がる情景に身を委ねたい、と思うときには、この本は最適だ。幾重にも積み重ねられて行く描写は、隅々まで描き込まれた絵画を見るようで、とても味わい深い小説である。ただ物語が現在と過去を行き来するとき、分かり難いので最初は戸惑う。気が付くと、過去の風景に囲まれてしまっていたりするので、混乱する。けれどもその分かり難さが、慣れてしまうと逆に嬉しかったりするのだから、不思議だ。活字中毒には、ちょうどよい分量と内容の作品。