「穢れしものに祝福を 」 評価:B あとがきに「人間の心の闇をのぞきこむ」とあるが、そこまでしんどくない。余韻を残すエンターテイメントといったところか。シリーズ物だが、起承転結がきちんと用意されているので、本書だけでも満足できる。せつないのは、主人公とかつての師ジェイ、かつての上司エヴェレットとの人間関係だ。美学のくずれていくかなしさ、信頼も理解もしているのに歯車が狂っていく無力感がたまらない。主人公も語り口も饒舌だが、ウンチクたれではないので読みやすい。ただし、随所にみられる「しゃれた言い回し」の3割が意味不明。翻訳物はこのあたりがつらい。