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私家版
【創元推理文庫】
J=J・フィシュテル
本体560円
2000/12
ISBN-4488208029
石井 千湖
評価:A
他人に激しく嫉妬し憎悪するまでになるポイントはなんだろう。友人が自分の夢だった世界で成功したら?しかも大して実力があるとは思えないのにだ。エドワードにとってのニコラがそう。ニコラはモテる。戦争の英雄で外交官で人気作家でもある。しかも自信家で明るい性格だ。エドワードは文学オタクでマザコンでモテない。作家になる夢も破れ出版社を経営しニコラの作品の英訳を手がけている。彼の恨みは一方的で歪んでいる。私は鈍感で明るいやつなんか大嫌いなのでじめじめエドワードにちょっと共感してしまう。ニコラをはめる計画も緻密で頭いいし。エドワードはイギリス人だけどそこにまたフランス人の底意地の悪さを感じてしまった。偏見か?
内山 沙貴
評価:B
主人公ラムは、今、自分の分身のような友人を殺そうとしている。憎しみが後戻りできないほど積もった今、ふとラムはその友人のことを想う。感情も時間も非可逆的で、一度崩れたら元には戻らない。「一体何が悪かったのか?」そんな自問も時の狭間に消えてゆく。淡々とした切り口でザクザクと肉を切り裂く世界の中、ラムは満身創痍のスターシップさながらに、外圧に耐え、孤独に耐え、暗闇に耐え、低空飛行を続ける。そして、突如として訪れる歓喜。耐えぬいたことによる安堵。そのとき世界に受け入れられない絶対的弱者は一体何を想うのか。この物語は薄い光を放っている。光はその薄もやの中で語っている。歓喜だ、歓喜だ、狂気だ、と。歪んだ世界に胸が締めつけられる。
大場 義行
評価:D
映画にいきたくてしょうがなかったし、この文庫が出たとき、書店で衝動買いをしそうになった。でも、どちらもしなくて良かった。はっきり云って自分に合わない。どうしてものめり込む事が出来ない。最初から最後まで、陰険な奴の陰険な復讐を見せられたようで、胸がむかつく。だいたい心が痛むとかなんとか言い訳をしながらも、喜んでいる奴というのが嫌だ。復讐の方法が本を使う事、完全犯罪である事など、色々と評価はあるだろうが、明るい成功者に対する、地味で陰険な男の、いかにも陰気な復讐の物語としか読めなかった。
操上 恭子
評価:C
ストーリーとしては、とても面白かった。解説にもあるとおり、英米ミステリーを読み慣れた者にとっては、結末はちょっと??で、読了直後には物足りなさもあったが、少し時間が経つとしみじみと面白さがわかってくる。映画化された理由もよくわかる。救いのないほど陰湿で暗い話でもあるのだが、いい歳をしたおっさんたちが、思春期の青年のように自分の自意識に振り回されているのが妙に滑稽だ。ただし、とても読みにくい作品でもあった。たった200ページちょっとを読むのに1週間近くもかかってしまった。前にも感じたことがあるのだが、ヨーロッパの作品というのは何故だか読みにくい。元々の言語の問題なのか、純文学だからなのか、文化の違いなのか。
小久保 哲也
評価:B
犯罪を犯してしまう動機が、読者を説得できるほどの作品というのはなかなか出会うことは少ない。そうしたなかで、この作品は、なるほどこういう状況ならと思わせる説得力がある。これは推理小説と思わないで読むほうがより充実した時間を持てると思う。読み終わると、割り切れないような想いが残る。フランス映画もそうなのだけどフランスってそういう割り切れなさが好きな国なのかなぁと思ってしまう。主人公の姿を「情けない男だな」と切って捨てるのは簡単なのだけど自分にも、同じ様に弱い部分があるのだ。それでも彼は、最後にチャンスを100%生かすことができたが、果して自分はどうなのだろうと、逆に考え込んでしまう。考え出すと深みにはまる、そんな小説。
佐久間 素子
評価:C
本の雑誌2月号、吉野さんの連載を読んではいけない。復讐方法のネタバレです。文庫版解説も読んではいけない。ラストシーンのネタバレです。白紙の状態で読んだら、もっと楽しめたかも。コンパクトにまとまった、おフランスの香りただよう復讐ミステリ。陰湿かつスマートな主人公がうすら寒い。映画版は、主人公がさらにスマートで(だってテレンス・スタンプだもの)、標的ニコラがさらに憎々しいので、復讐がリアルに怖い。映画と原作は別ものなのだけれども、どちらかというと、映画に一票。
山田 岳
評価:E
フランスの好きなお人やったら、ええですねんけど・・・。そやなかったら、つらいのんと、ちゃいますやろか。イギリス人が主人公ということに、なってはりますのんやけど、こんな、ものの考え方しはるイギリス人はいてしまへんのと、ちゃいますか?それにィ、なんですかぁ、フランスでは今でもお’とことお’んなの営みを「所有する」言わはりますのんか?ほな、いっぺん田嶋陽子センセにでも、おこってもらわなあきまへんな、フランス国営放送ででも。こないに、本筋と関係あれへんことが気になって気になって、かんじ’んの本読みがちィっとも進まへんのですわ。
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