「穢れしものに祝福を 」 評価:D ああ、またかいな(ため息)。ちかごろのアメリカの探偵はんは、こそ泥とよう区別がつけへんようなことを平気でしはる。どないなってんねん、あの国は。じぶんの目的のためには、なにしてもええのんか? 好き勝手、やりたい放題は、ハリウッドの映画の中だけにしてほ’しいわ、ホンマに。小説が映画の影響をもろにうけて、どないすんねん。200ページ近こ読んでも、ぜんぜん感情移入でけへんかったわ。
「青雲はるかに」 評価:A 「じぶんは会社に飼い殺しにされてる」とおもってはる男はん、読みなはれ。 「海外旅行に行っても、わたしは自由になれない」というおなごはんも、読みなはれ。主人公の范雎はさ’いしょ、じ’ぶんの才覚だけで世の中をわたっていけると思うてはったんですな。ところがあきまへんのや。やっと貴族の家来にしてもろた、と思うたら、あらぬ疑いをかけられはって、殺されそうになりまんのや。そこをた’すけてくれるのんが、かつて范雎にた’すけてもろた、お’んなたちなんどすな。かつてた’すけてもろた言うのんは、命だけやおまへん。お’んなとして、た’すけてもろた、いうことなん’ですわ。范雎はまわりのひ’とに、た’すけてもろて、まわりのひ’とも、范雎をた’すけることで、それぞれ、じぶんの花を咲かせはる。こないな立身出世物語は、そうそうありまへんな。
「私家版」 評価:E フランスの好きなお人やったら、ええですねんけど・・・。そやなかったら、つらいのんと、ちゃいますやろか。イギリス人が主人公ということに、なってはりますのんやけど、こんな、ものの考え方しはるイギリス人はいてしまへんのと、ちゃいますか?それにィ、なんですかぁ、フランスでは今でもお’とことお’んなの営みを「所有する」言わはりますのんか?ほな、いっぺん田嶋陽子センセにでも、おこってもらわなあきまへんな、フランス国営放送ででも。こないに、本筋と関係あれへんことが気になって気になって、かんじ’んの本読みがちィっとも進まへんのですわ。
「密約 物書同心居眠り紋蔵」 評価:B NHK金曜時代劇の原作。そやさかい? 読んで’ても、主役の舘ひろしの顔ばかりうかびますねん。人物描写はあまり細こうせん、ちゅうのが今風やねんなあ。短編集やねんけど、全体を通して父を殺した犯人を探しつづける、ちゅうのんが、連続ドラマ風。おもろいねんけど、「あー、おもろかった」だけで終わってもうて、せやったらテレビ見てたほうが話がは’やいやんか。ちゅうても、最後はうまいこと余韻をのこっしはったな。
「六番目の小夜子」 評価:A な、なんでやろ? 読みはじめたとたんに、すうっとじぶんの気持ちまで高校生にもどってもうた。あとはラストまで一気や。あとがきに「NHK少年ドラマシリーズへのオマージュ」と書いてはったんで納得。わし’も、あのドラマシリーズのファンやったさかいな。そーゆー意味では、あのシリーズの「時をかける少女」(筒井康隆原作)と双璧やね、わし’の中では(関係あれへんけど、NHKでは「続・時をかける少女」まであったんやで)。その時代を知らへん人には、どな’いやろ?なぞの転校生、沙世子の登場のしかたが、めちゃめちゃこ’わいのは確かやけどね。
「ウルフ・ムーンの夜」 評価:D 物語が動きだしはるのは50ページからやねんけど、とばしてまうのがお’しいほど、筆がさえてはる’。雪深い国境の町のふ’ゆをいきいきと描いてはる。はじめは評価Bにしたろかと思うたんやけどな・・・。じぶんを頼ってきたお’んなを守ってやれへんかったいうのんは、アメリカ人にとってそぅと’ぅ屈辱的なんやねんな。ワルをカナダの町まで追いかけはって、はんたいに麻薬所持の濡れ衣をきせられはるくらいに。もうやめときって言われてはるのに、一味のもんのロッジまで行かはって、か’ぎをこじあけたろ思わはるくらいに。か’ぎがあかへん言うて、トラックをつっこますくらいに・・・。あかんわ。気は確かでっか、この主人公? せっかくテンポよう、は’なしが進んではったのに・・・。こないなは’なしに、探偵作家クラブ賞でっか? はぁ(ため息)。
「天才伝説 横山やすし」 評価:A おい、コラぁ! こないしょーもないざれごと(書評)読んでるひまがあったら、さっさと注文せんかい! ど、どこを見とんのや! ここや、ここ! 「天才伝説」や! おっこるでぇ’しまいにィ。わしを誰とおもうとんのや、あほんだらぁ。横山やでぇ、やすしやでぇ。(突然、メガネを頭のうえにもちあげて、涙をぬぐいはじめる)せやけど、キィ坊、なんでわいのこと見捨てはったん? なんで、こないしょーもない東京もんにわしのこと、書かれなあかんの?あれ? メガネ、メガネ・・・(うろうろと手探りで、さがしまわる)・・・あった!(メガネをかけなおして、タンカ切りながら、ねめつける)おい、コラぁ! しょーもない、わしのバッタもん(ニセモノ)見て、笑ろてるひまがあったら、さっさとこの本読まんかい! しばくど(なぐるぞ)、しまいにィ。(大阪の芸人には、まだまだ生々しくて書けない話の連続であった。合掌)
「不機嫌な果実」 評価:E つ、つらいは’なしや、お’とこには。おなごはんはき’っと「そうそう! そうなのよ!」と言わはると思いまんのやけど。お’とこは、会社でリストラにおびえ、い’えでは「不機嫌な果実」を読んではる嫁はんにおびえ、こ’んなんでは、世’の中、ちいっともようなって行きまへんで。 「恋愛小説の最高峰」でっか? お’んなのおらん世界に行きとうなってきた・・・。
「ハドリアヌスの長城」 評価:E わっからへん。アメリカの、南部の、15歳の少年の考えてはることは。いや、お’となも・・・。夏目漱石みたいにこ’まかいこ’まかい描写をつみかさねてはるのやけど、なんや、かんじんのことは落としてはるのとちゃいますか?それは最後のおたのしみ、なんて言わはるのやったら、あかんわ。評者は、もう人生折り返してんねん。そないにのんきな話には、つきあってられへん。長城だけに、話もめちゃめちゃな’がい? しゃれにもなれへんで。
「火の接吻」 評価:C おもろい。エンタテイメントとしては傑作や。せやけど、ミステリーとしては、どないやろなあ。はじめには、ほとんど出てきいひんかったお人が、さい’ごのさい’ごで重要なか’ぎを握るちゅうのんは。「インディー・ジョーンズ」ではOKでも、「刑事コロンボ」では、あかんやろ。ルール違反やで。