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   バーバリー・レーン28番地
  【ソニー・マガジンズ】
  アーミステッド・モーピン
  本体 1,600円
  2001/1
  ISBN-4789716465
 

 
  今井 義男
  評価:B
  屈折していなければ市民権が剥奪されるのか、と疑いたくなるほど屈折した人間ばかりが登場する。まず25歳の娘を子供扱いする過干渉な母親と、自立と家出の区別もつかない娘のジャブに出足を止められ、続々と現れる快楽主義者の波状的なワン・ツーにスタミナを消耗し、後半ラウンドではほとんどタオル寸前にまで追い込まれていた。こんな連中にはとてもついていけない。70年代ですでにこれだからアンクル・サムの先取り精神が止まるところをしらないのも頷ける。なにより驚いたのは自傷癖のあるジャンキーが<命の電話>のボランティアをしていることだ。この<最後のヒッピー>ヴィンセントの脆弱な個性はヒト科に属する生き物の象徴である。なにかに縋らねば生きられない彼らを嘲笑する権利は誰にもない。我々はかくも愚かで弱々しい。

 
  松本 真美
  評価:C
  同性愛を含めたフリーセックスとかマリファナとか、舞台である1970年代のアメリカ、それも西海岸がリアルに描かれている…らしいんだけど、あまり感じられず。かといって現代っぽいか、というとそういうんでもなく、つまり遠い話だった。舞台や時代が遠い小説なんていくらでもあるわけで、それがどう自分に近づいてくれて、あるいは自分がいかに近づきたくなるかが読書の醍醐味だと思うのだけど、残念ながら遠景のままだった。全6巻シリーズのしょっぱなということもあって、まだストーリー的にプロローグだからかもしれないけど、ヒロインにもこの時点ではまだ魅力を感じず。登場人物では下宿屋のマドリガル夫人が唯一の魅力的キャラ。…なんか、われながら味気ない感想。

 
  石井 英和
  評価:D
  う−む。まだ残りは大分あるな・・・と、読みつつ何度か嘆息。いくら読んでも終わらない気がした。何も付いてないパンを一斤、ひたすら食べ続ける、みたいな感触。これ、アメリカ合衆国の、あるタイプの人々の送った日々を、特に刺激的な山場も新しい発見も無しに(別名・爽やかに?)書いてあるだけでしょ?きついです。70年代の、サンフランシスコの、といった「売り」はあるだろうけど、それは「懐かしのメロディ」的価値でしかないし。そもそもこの本、日本人向けに訳される必要があるのだろうか?この種の本は、アメリカ人の生活の、非常にドメスティックな、ある部分でだけ必要とされているものなのであって、海の彼方の我々には無縁無用のもののような気がしてならないんだが。作品の出来の善し悪し以前の問題として。

 
  中川 大一
  評価:D
  会話が多く、しかも発話ごとに改行されているからサクサク進む。ああなるほど、もともと新聞小説で、テレビドラマ化されてるのか。どおりで見出しも多く、読みやすいはずだ。訳者は「当時のサンフランシスコを知」っていて、「一つ一つが……懐かしく、楽しかった」そうだ。一方、私は当時も今もサンフランシスコなんて知らないので、頻出するカタカナ言葉に右往左往。どうやらポイントはこのへんにありそう。発表当初の四半世紀前ならともかく、今じゃドラッグや同性愛の描写は小説としては過激なものじゃないしね。プーカ・シェルのネックレス、ペザント・ドレス、クエルード、ラモス・フィズ、アティカス・フィンチ……。こんな言葉にピンと来るかどうか、つまり細部を楽しめるかどうかで評価が割れる本。

 
  唐木 幸子
  評価:D
  ドラッグ、ホモセクシャル、幼児ポルノ、、、、、と過激な内容を扱ってはいるものの、まるでTVホームドラマの脚本を読んでいるような惰性を感じる。最後まで何かが足りない気持ちでもどかしかった。一体、これは何なんだ、どこがベストセラー小説なんだと?マークがいっぱいだったが、訳者あとがきを読んで納得。これはシリーズものの第1巻で25年も前に一世を風靡した作品なのだ。この巻は導入部であり、以降は主人公の身の上に動きがあるらしいのでそれなりに楽しめそうではある。でもやっぱりこれを面白く第6巻まで読めるのは、アメリカ人か、御当地サンフランシスコに住んだことのある人だけじゃあないのか。

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