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   The Twelve Forces
  【角川書店】
  戸梶圭太
  本体 1,600円
  2000/12
  ISBN-4048732617
 

 
  今井 義男
  評価:A
  国産の冒険物としては破格の面白さである。内容の掴みにくい装丁とか軽薄な目次で二の足を踏んでは絶対に後悔をするので惑わされないように。地球の命運を賭した壮大なスケールの話なのに、登場人物が緊張感を欠く人間ばっかりという、そのアンバランスさでとにかく先行きが読めない。下世話なギャグも満載だが、広げた大風呂敷にあまり不自然さが感じられないのは、細部の描写にも一切ぬかりがないからだろう。最大の見せ場、ジャングルでの戦闘シーンもテクノロジーを駆使した奇想天外な作戦であるにも関わらず、硝煙と血しぶきの臭いが漂ってきそうなほど臨場感がある。前作の『赤い雨』を読んだ限りではこんな作品を書くとは想像もできなかった。まだまだ引き出しがありそうで今後が楽しみである。冒頭の根本敬みたいな下手くそなイラストも読み進めるうちに笑えてくるから不思議だ。

 
  松本 真美
  評価:A
  きゃあ〜!こういう小説を待ってました。初めて浅田次郎の『きんぴか』を読んだときのめくるめく可笑しさと感動の嵐を思い出した。…あの頃のジローは好きだったゼ!つかこうへい→ジローと続いた、私を<笑かして泣かしてカンドーさせてくれる一挙三得小説>の継承者がようやくここに見つかりました。パチパチ。最初の3頁で5回は爆笑したな私。でも、感動や感激より笑いこそ相性なので、この小説もつまんない人はいるってことね。他の採点員の方の感想が楽しみ。実物はメチャ誠実そうな中川さ〜ん、いかがでした?私の<残尿感>は忘れて下さいね〜。あ、私信に使っちゃマズイっすね。とにかく、バカだけど秀でててふざけてるけど真剣な話で、しかも最後はせつないファンタジーとくりゃあ、私には黄金郷で桃源郷小説なのだ。登場人物はどいつもこいつもキャラ立ちしててイッちゃってて、展開もワクワク、言葉のセンスもピカピカ…とにもかくにも心から堪能しました。

 
  石井 英和
  評価:E
  紋切り型を並べた上滑りの文章を、この著者は「軽妙な文体」と信じ込んでいるようだ。さらには、自身にユ−モアの感覚があるとも信じ込んでいるので、こちらは作中で「ギャグ」が発せられるたびに気恥ずかしい思いに身悶えせねばならない。いや、それより問題なのは、どうやらこのタイプの小説を支持する年代、層、といったものが存在しているようだが、この小説が、そんな読者層と著者との馴れ合い、もたれ合いによって成立しているらしい事実だ。作中の、著者から「仲間たち」へ向けられた「共鳴」を促すサインの散りばめられ具合から想像するに。そして、「部外者」には見苦しく感じられるその部分が、それ故に、ファンにとっては、この小説のおそらく最大の魅力なのだろう。自分たちを「仲間」と確認し、安心してじゃれ合うための小説。なんだか気持ち悪いがなあ。

 
  唐木 幸子
  評価:C
  よくこんな無茶苦茶な小説を書けるなあ、というような、漫画『北斗の拳』と映画『ジュラシックパーク』を混ぜたみたいな世界が延々と描かれる。読んでいて特に、『北斗の拳』の暴力シーンを何度も思い出した。残酷なのかフザケているのかわからないくらい何でもありなのだ。私は何とか半分くらいまでは丁寧に読んだのだが、力尽きて後半は流し読みになってしまった。書く方もさぞかし体力が要るだろうが、読む側も本作を軽くクスクスと笑って読めるくらいの若さが必要だ。あんまり真面目に読まないで、お菓子でも食べながら寝っ転がって、そう、漫画を読むような気持ちでないと40歳以上の読者は付いていけないかも知れない。

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