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勝手に目利き
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   陰陽ノ京
  【電撃文庫】
  渡瀬草一郎
  本体610円
  2001/2
  ISBN-4840217408
 

 
  石井 千湖
  評価:C
  いやはや十ン年ぶりのティーンズノベル。『なんて素敵にジャパネスク』を思い出しました(遠い目)。タイトルからわかる通り流行の陰陽師ものです。安倍晴明もでてきます。でもそんなことはどうでもよくて、ラブコメとして楽しく読みました。ひとつ不満を言わせていただくならば登場する女の子が時継をはじめとして皆同じパターンの美少女なのがつまらないです。綺麗で優しくて強くて、でも護ってあげたくなるような。理想なんでしょうね、きっと。敵役の無明が唯一異なりますがどうも迫力が足らない。私は飄々とした男の子に弱いので主人公の糸目の保胤くんはなかなか魅力的でしたが。

 
  内山 沙貴
  評価:B
  少し切ない。少しほろ苦い。鼻の奥をくすぐるような甘い薫りに振り仰げば、青い空、ヒラヒラと宙を舞い身のまわりを漂う桜の花びらがある。春ですねぇ。胸が淡く色めく。物語の初めは夜の黒の中に激しく赤い線が引かれるような、闇の匂いのする話だったが、いつの間にか闇の中にも色彩が現われはじめ、やがて夜の闇は昼の光に押し退けられていった。なかなかうまく出来た話だなあと思う。多少カッコ良さを追求したような感じもあるが、初めから終わりまで軽い感じはしないし、すっくと立ち上った物語の存在をアピールしている。物語全体のまとめ方もなんとも妙である。珍しく「おもしろい作品」を読んだ気がした。

 
  大場 義行
  評価:D
  おう電撃!最近、何人もの安倍晴明が量産されたが、ちと目先を変えて慶滋保胤に主人公を変えただけのもの。これは今一つのジャンルになったのか?陰陽師モノっていうのか?かつては剣と魔法のファンタジーだったが、今はみんな刀とお札の和風ファンタジーになったのか?結局元祖の荒俣宏、二代目夢枕獏を誰もが超える事が出来ないだけでなく、まさか晴明と言えば売れると勘違いしているのだろうか。まあ怒り狂うだけではなんなので、個人的な一言。「陰陽寮」よりは面白かった。「次代を創造するエンターテイメントを発掘する」のが目的という事らしい電撃なんだから、全く目先を変えた新しいファンタジーを掘ってくれ。

 
  操上 恭子
  評価:B+
  細かいことなど、どうでもいいと思えるだけの、パワーとスピードと面白さがありますね。その物語の続きを読みたいかどうかというのが、小説の評価の基準の一つだと思うのですが、その点この『陰陽ノ京』は大合格。もう早く続編が読みたくて仕方がないという感じです。まだまだ解明されていない謎があるようのなので、いずれ続編にお目にかかれるのは間違いないでしょう。待ち遠しいことです。すべての登場人物がとても魅力的で、しっかりと描かれています。主人公も出来過ぎなほどカッコ良いです。ただ、主な登場人物のほとんどが、何となくカップルを形成しつつあるのがちょっとつまらないような気もしますが。

 
  小久保 哲也
  評価:B
  ストレートに見える。状況や、主人公の動きが、まるで映像のように響いてくる。特に、音の使い方が抜群だ。戦いのシーンで、攻撃と反撃の流れが微妙に変わるその瞬間、作者は、ただ一言「どくん」という鼓動の音を書き、すべてを表現する。主人公が反撃に転じる気配の変化と、その気配を察して攻撃を止める相手の動きを。すばらしい、感性だ。しかも、あまりにも素直に読めてしまうので、その素晴らしさを見逃してしまう。魑魅魍魎を相手にする陰陽師の活躍と言うと、それだけで子供向きの作品と捕らえる人も多いけれど、本書の押さえの利いた荒唐無稽さは、十分精読に耐えうる。これからの季節、夜空を眺めながら読みふけるには、この一冊である。

 
  佐久間 素子
  評価:E
  話もキャラもありきたり。陰陽師ブームで、王道にしろ変則にしろ、おもしろい本がたくさん出ている現在、参入が難しい分野だとは思うけど。慶滋保胤を主人公にもってきた所が新味かと思ったが、保胤である必然性はなく、晴明におきかえたところで何の問題もない。甘く見えるほど温和という性格は魅力的であっても、キャラ設定の枠を出ずじまいだ。万事そんな感じ。敵がしょぼいから、クライマックスも尻すぼみ。異形の哀しさ(主題じゃないのか!)をもつキーパーソン鷹晃にいたっては、何の活躍もしないまま呪われて、以後ほったらかし。勿体ないの一言。とにかくアラが見えてしかたなかった。

 
  山田 岳
  評価:B
  電撃ゲーム小説大賞なん’て時代の最先端に、陰陽師なんてふ’るいものが結びつきはることからしておもろいわ。はっきり言’うて、序章の文章はつたないわな。本編も、プロットはしっかりしてはんねんけど、描写とい’う点では、う’すい。テレビドラマの台本みたいや。これに賞をあたえはったひとた’ちは、めいめいにじぶんのあ’たまで、各シーンの情景を想像しはったんやろな。映画監督やTVディレクターをめざしてはるひとには、ええのんとちゃう?会話も気がきいてはるし。

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