「紙婚式」 評価:B 一人でいるのはさびしいが、理解しあえない二人が一緒にいる方がより一層さびしい。理解という幻想を粉々にしつつ、紡がれる8つの短編は、おそろしいことに、結婚がテーマである。かなしかったり、こわかったり、うつろだったり、さびしさの味は違っても、いずれも説得力にあふれ、フィクションだ他人事だと目をつぶることができない。小さい固い結晶のような孤独を残す本である。ホラーも負けるすさまじい短編もあるが、しみるのは、限りなく普通を描く、例えば『バツイチ』。「ずっと柔らかいままの女性は、この世に実在するんだろうか」と幸福のさなかに考える主人公が痛々しい。結末は読者にゆだねられ、ないも同然のかそけき希望にすがりたくなる。