「紙婚式」 評価:D キレイだがぼやけた色のついた和紙のような物語たち。彼らは一見してとても柔らかく、清らかで、つつましいのに、そのぼかされた紙の中に極彩色の悪魔が尖ったしっぽを潜めている。暖かな家庭に吹くすきま風のような不安。そんな、危ない綱渡りみたいな結婚生活の話が続いた。世界中の誰もが水の中にいるようなモヤモヤした身動きの取れない人生を送っているわけではないのに、「結婚生活とは救われないものだ」と一瞬思った。しかし次の瞬間救いの道はたくさんあるじゃないかと気づき少ししらけてしまった。長い人生の中で、そんな危うい瞬間はほんの一時のものではないか。ぼやけた色は、たぶんその後もずっとぼやけた色なのである。