「ぢん・ぢん・ぢん」 評価:A 主人公の美少年イクオが出会った究極の醜女・則江がいい。誰もに疎まれる容姿と屈折した性格。徹底的に描かれる凄まじいまでの醜さに感動した。うじゃうじゃ出てくる美女の存在が霞んでしまうくらいだ。葛藤のない者、屈託のない者、劣等感のない者はいない。本来ならドロドロしてない人間なんていないはずなのに「私はさっぱりしてます」という顔をしているのは嘘っぱちだ。普段の自分は必死で劣等感と折り合いをつけつつ、ちっぽけな自尊心を保っている。だから則江に惹かれるのだろう。負の部分が共鳴するのだ。惨めで滑稽で鬱陶しいところに。切実な気持ちでのめりこんでいるとラストで大爆発。すごい。ほんとうにすごいとしかいいようがない。萬月、最高。文句なく今月のイチオシだっ。