「ぢん・ぢん・ぢん」 評価:B この作品は、理屈っぽい。ヒモを目指す主人公イクオの視線を通して、さまざまな世界の理屈に触れてしまう。浮浪者、ヒモ、同性愛、性転換、在日外国人。しかも、それぞれの世界に住む人々の理屈が胸に迫ってくるのだ。なかには、青臭い理屈もあるものの、ここまで迫力があると、何気に説得されてしまう。そして、最後の最後まで、どこに連れて行かれるのか予想のできないプロットにも脱帽だ。この一気に読ませるドライブ感は、「ジャンゴ」に見られるものと同一。さすが萬月。でも、あいかわらず、彼の本を続けて読もうとは思わないけれど。。。特に心にズシンと響いたのは、「豊富な語彙は表現を豊かにするというよりも、問題をより複雑化するだけ」という文章だ。そうなのだ。本当に心から伝えたい想いがあれば、語彙などは関係ないのだ。そして、この作品には、その想いが隅々からほとばしっている。