「ぢん・ぢん・ぢん」 評価:A これはマラソンと同じだ。我々のような素人がフルマラソンに挑むと、とにかく、ぼろぼろになっても走りまくる。走っている当人はどっちに向かっているか段々判らなくなる。でも走る。走るしかない。この感覚が登場人物たちと共通している。みんな必死になってなにかを目指すのだが、その結果が何を意味するのか分からない。主人公であるイクオ、典江、みんなの走りぶりが堪らない、切ない。今の花村萬月はこの作品の後から凄味を失った。そう云われてもしかたが無いくらいの凄味溢れる作品だったと思う。