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勝手に目利き
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  グランド・ミステリー  グランド・ミステリー
  【角川文庫】
  奥泉光
  本体 724円(上)
  本体 705円(下)
  2001/4
  ISBN-4043578016
  ISBN-4043578024
 

 
  大場 義行
  評価:C
  鳩が豆鉄砲を喰らったような顔とよく言うが、どんな顔なんだろうと今まではイマイチ確信が無かった。でもこの本を読んで安心。間違いなく、この本を読み終えた直後の顔がそうに違いない。眼を丸くしてお口あんぐり。面白いかと聞かれたら、うむうと唸るしかないが、そんな事は関係ナシ。とにかくこの本は凄い。一応内容を説明すると、戦記ミステリーだけれどもSF風味を利かせた日本人論恋愛仕立て。暴力的にまとめて仮想戦記と云えなくもないが、とにかく既存の言葉では説明できない本だった。真珠湾攻撃で始まったときは、普通の物語だと思ったのに、二転三転という言葉では表せないほどの回転ぶりが凄まじい。

 
  小久保 哲也
  評価:C
  部分部分を見ると、すばらしく光っているのに、全体像がわかりにくいために、結局はキツネにつままれたような、そうした感覚しか残らない。何度もくりかえされる場面が微妙にずれていく記述には心躍らさられるのだが、もう少し構成を考える必要があるのではないだろうか?全体を何度か読み返せば理解ができるかもしれないが、再度読み直そうと思うほど迫って来るものは感じられない。エンターテインメントと言えなくもないが、それよりむしろ奇書と評するほうがよりすっきりと本書の位置を思い描けるような気がする。少なくとも、読み終わったときに充実感が欲しい。それさえあれば、今月一押しの作品だったのにと返す返すも残念。

 
  山田 岳
  評価:AA
  なんや、夏目漱石はんが書かはったような、スペクタクル・ロマン長編戦争ミステリーでございますなぁ。第一章は、真珠湾攻撃にむかう潜水艦と空母のなかで、それぞれ事件がおこらはるんどす。男の人は空母のなかのようすだけで、夢中になってしまわはるのんと、ちゃいますか。そうかと思えば、第二章では、ヒロインが、高等遊民をつづけるべきか、結婚するべきか、ストレイ・シープにならはるのんどす。ふたつの章はまったく関係おへんようにみえて、じつは下巻にむけての、だいじな伏線になってはります。その下巻は、ちぃっとばかり、はなしがややこしのんどすけど、しんぼうしてはったら、物語のからくりが見えてきはりますねんな。昨今は、無条件に、あの戦争を賛美しはる、お人もいてはりますけど、この小説で書いてはるように、あやしい人も、えらい蠢(うごめ)いてはった時代なんどすえ。

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