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血脈
【文藝春秋】
佐藤愛子
本体 各2,000円
2001/1-3
ISBN-4163197907
ISBN-4163198601
ISBN-4163199004
今井 義男
評価:AAA
なんともすさまじい一族である。読んでいると小説がすごいのか、登場する人々がすごいのか、だんだんわからなくなってくる。このもたれ合い、依存し合う小宇宙の重力圏からは誰も脱け出すことができそうにない。常日頃<家族>という単位に幻想を抱いている人は、しばらく立ち直れなくなるだろう。ここに書かれていることがらやできごとは、規模の大小はあるにせよ、おそらくどこの家の中でも起きているはずだからだ。人間の生は醜く意地汚い。作者の筆は生皮を剥がすごとく、容赦なくそれらを暴き、我々の眼前に晒す。理想は気高くとも、心の内には暗い情念をも併せもつ。それが人間なのである。読後、文学者ってなんなのだろうと、考えさせられた。倦むことを知らぬ洽六と息子たちの放恣に押し潰されることなく、孤塁を貫き通したシナの生涯は見事の一言に尽きる。上中下と三巻にも及ぶ大長編だが、文章は平易で非常に読みやすい。私小説の白眉。
原平 随了
評価:A
横暴、傲慢、傍若無人……、そんな形容がぴったりな家族の話。著者であり登場人物の一人でもある佐藤愛子の言い方で言うなら、「悪い血」の流れる「普通やない一族」の物語だ。上巻は、はっきり言って、かなり疲れる。佐藤紅緑、サトウハチロー、この二人のキャラクターのあまりの猛々しさに、読む方まで、くたくたになってしまう。どんなに立派な小説を書こうと、どんなに優しい詩を書こうと、それが免罪符になる筈もない。ところが、中巻に至ると、文中に悲哀のようなものが忍び込んでくる。紅緑の老いと死の過程で、横暴と傲慢の背中合わせにある熱血と繊細が見えてくる。それにしても、佐藤愛子の筆は、佐藤家という嵐の中の船で船酔いしてしまうほどのド迫力。家族の歴史を見つめるその描写は詳細を極めるが、繰り返しも多く、また、肉親を描いたが故に、時にその目が厳しすぎたり、あるいは甘すぎたりと、冷静さに欠ける部分もある。が、それもまた、実は、本書の大きな魅力なのだ。私小説であり、家族小説であり、分類するなら純文学ということになろうが、そんな分類など不要。強いて言えば、大傑作という分類に入るだろう。
小園江 和之
評価:A
書き始めたのが著者六十五歳のときで、書き終えたのが七十七歳。十二年間かけて結実した三千七百枚。そこに書かれてあるのは、佐藤一族に流れている荒ぶる情念に翻弄され自滅していく男達と、彼らと関わったばかりにまっとうな人生からはじかれてしまう女達。異母兄、サトウハチローの実像。などなど、まさに凄まじいとしか言いようの無い、まともでない生き様のオンパレード。最近のエッセイ集を読んでは、相変わらず憤怒を喰らって生きてるような、元気で面白いおばちゃんだなあと思ってましたが、こんな修羅の世界を生き抜いてきた人だったとは……。粗製乱造の分厚いだけの小説ではありません。ひとつひとつの言葉に神経がいきわたり、濃厚な文章なのに重苦しさがなくて読みやすい。嫡男たちの非業の死に様が描かれていながら、凄惨さはなく、ときにそこはかとない可笑しみさえ感じさせる筆力。驚嘆すべきは最後までそれが持続していることで、まさしく著者も佐藤一族のひとりであることを証明しているかのようです。長くたって描き切るために必要であれば、読むのも苦ではありません。
松本 真美
評価:A
濃いぞ、佐藤一族。特に男連中は、一族の血の毒気にそろって自家中毒でも起こしたように、誰一人まともなのがいない。どいつもこいつも鬱陶しくて情けなくて我が儘で意地汚くて少し哀しくて、とにかく関わり合いになるのは真っ平なラインナップ。読んでてこっちまで毒が伝染しそうになった。が、さすが毅然女王愛子センセ。皿どころか、盆や飯台まで食らって毒を制す(征す?)覚悟が伝わって、中盤以降はむしろ突き抜けて清々しかった。特に死の描き方。その中でもシナ。昨年、母親の死にがっぷり対峙させられ、今も囚われている身としては、死に逝くさまが我が母とそっくりなシナの最期の場面はせつなかった。が、救われた。これに比べりゃ、男どもの最期なんて私には屁みたいなもん。…それと、夫婦!どーしたもんかなこいつら、という屈折夫婦ばかり。添い遂げる、とか、夫婦善哉、なんて言葉は幻想でしかない?すったもんだ渦中の夫婦は「こいつらに比べれば自分らはまだマシ」と思うかも。
石井 英和
評価:B
どこかでこんな話を読んだ記憶があると思いながらペ−ジを繰って行ったのだが、途中で「ギリシャ神話だ」と気がついた。大神のくせして行状の悪いゼウスを囲み、支離滅裂としか言いようのない振る舞いに走る神々の物語。だがもう遙かな昔に、そんな奔放な神々の生きるべき時代は過ぎ去っていたのだ。そこに、「血脈」にかかわる人々の悲劇(喜劇?)がある。小説として読んだら構成に問題あると思う。紅禄、ハチロ−と、「大物」二人が舞台から去って後の話は「デタラメの血脈」の残務処理っぽくなる。そこでの主役である著者自身も後始末役、あるいは終幕の見届け役の色合いが濃い。その終幕部分が長過ぎるので、読み手としては退屈感がないでもないのだ。が、「事実としての重み」がその背後に横たわっているので文句も言い辛い気もして、ちょっと困ってしまう。
中川 大一
評価:B
(それにしても、あれだな。大長編ってのは、読んでつまらなかったら大ショックだからな。どうも評価が甘くなる傾向があるな。ついに、ついに読んだぞおおおって、コーフンした状態でコメント書くしな。)くだらない独り言はさておき、「何という哀しい、切ない、そして笑えてくるこの人間関係!」を描いた大河私小説。ほー、佐藤紅緑って、真面目な話し書いてるわりにすげえ女好きだったんだ。ふーん、サトウハチローはシャブ中だったのか。品性が下劣なもんで、私はこの本をスキャンダラスな実録として、眉をひそめつつも口元をゆるめて読んだ。だが、本書が凡百の暴露本と一線を画すのは下巻。上中巻で父や義兄に射た矢が著者自身に降りかかってくる。そう、愛子もまごうことなくこの強烈な血脈に連なる者だったのだ。著者はそのことを、書いている内容と、書くという行為自体によって、これでもかこれでもかとぶちまけ続ける。恐るべし、老いて燃えさかる作家の執念。
唐木 幸子
評価:A
もう20年も前、私が著者のエッセイを笑って読んでいたら、明治生まれの私のの父が、『この人のお父さんも作家でなあ、あんたら知らんやろけどものすごい流行作家やったんやで』と言ったことを覚えている。その佐藤紅禄とは、こんな人だったのか。私は決して巷評のようにこの家族をハチャメチャとは思わない。豪胆、という筋が通っている。北杜夫の『楡家の人々』が繊細で諦観と哀惜と品に満ちているのに比べ、古き日本にもこんな家族が!、と思うほどありのままだ。それにしても普通ならそろそろボケる77歳でこんなに骨格の太い物語を完成して尚、シャキっとしている著者の凄さには驚く。分厚い3巻を通じて全然ダレないのだ。読み始めたら一気に行けるぞ、重いが持ち歩こう。
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