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   オンナ泣き
  【晶文社】
  北原みのり
  本体 1,600円
  2001/4
  ISBN-4794964838
 

 
  今井 義男
  評価:AAA
  いまのいままで、こんなに簡単なことから我々は目をそらしてきたのか。物事の真理というものは大上段に構えなくても、見るべきものに目を向け、聞くべききことに耳を傾ければ誰にでも理解できたのだ。私は2001年5月20日以降、この北原みのりを無条件に支持し尊敬する。愚にもつかぬ観念論を並べ立てて恥じない学者や、腰の引けたテレビ文化人たちは著者の爪の垢でも煎じて飲めばいい。レイプシーンを好んで書く作家と、それを喜ぶ読者も、なにか反論する勇気があるならやってみるといい。<ジェンダー>のなんたるかを一度も考えたことのない人は、騙されたと思ってこの本をお読み願いたい。著者の人柄がしのばれる痛快な語り口で、とてもわかりやすく書かれている。そして、ここには二つの道が示される。いますぐにでも目を見開くか、残りの半生も引き続き愚か者として過ごすかだ。今月は図らずもAAAの大盤振る舞いとなった。だが、いいものはいいし、面白いものは面白いのだから他にどうすることもできないのである。ところで、誰にいいわけしているのだ私はいま。

 
  原平 随了
  評価:C
  書かれていることの一つ一つは、どれも、しごくごもっともなのである。「オンナはオトコに従うもの」なんて言うヤツ、今時、いるかね?と思わぬでもないが、口に出して言わないまでも、本音のところでそう思ってる男はけっこういるだろう。かく言う自分の中にも、そういった偏見があるやもしれぬ。多分、いや、間違いなく、あるはずだ。であるから、そのあたりの反省も含めて、このエッセイには、おおむね、異議がないのである。異議はないのだけれど、薄っぺらな本という印象を拭うことができない。〈男〉と〈女〉を〈オトコ〉と〈オンナ〉と、カタカナ表記して、何が変わるの?「暴力はファンタジー」だとか「男の性はレイプする性」などと語るようなマッチョ男をやり込めて、そんなに痛快?この本に致命的に欠落しているのは、〈ジェンダー〉なるものをひらりと飛び越える〈想像力〉ではあるまいか。


 
  小園江 和之
  評価:B
  この人の著作を読むのは初めてだったもんですから、まずはカバーにホームページURLがあったんでそちらを覗いてみました。コンセプトは理解できるし面白かったんですが、本書を読むにあたって役に立ったかというと何だかよく分かんないんでした。ただ、今の世の中で女性が不利である局面はたくさんあるし、「オトコ」であることで許されちゃうこととか、逆にオトコ社会に媚びてのし上がっていく「オンナ」もいる。そんでまあ、ジェンダーの問題、ってのは一筋縄ではどうにもならんようだってことまでは分かりましたが、じゃあどうすりゃいいのか、ってことまでは書いてはありません。とりあえず今は、彼女達の提示する事実を主観をまじえずにそのまま見たり聞いたりするしかないんでしょうね。それと、オンナ(子供もだけど)が殺されすぎてる、ってのはまったくその通りですね。

 
  松本 真美
  評価:B
  正論を客観的によどみなくわかりやすく語れる人は尊敬してしまいます。硬軟含めてちゃんとお勉強した上で、自分の考えをきちんと構築しつつ、きっと理論武装もおさおさ怠りなく、でも小賢しい言葉に走らず、一見、女性雑誌のゆるいコラムのような語り口と、とっつきやすいタイトルと軟らかい表紙で敷居を低く設定し、でも言うべきことは余すことなく言ってます、って感じ。基本的には共感。特に、性を限定せずニンゲンを語ったところは深くうなづきました。でも、ジェンダーやフェミニズムという言葉が頻繁に出てくると、いろんな意味でちょっと過剰反応な気がしました。オトコ論も時に極端で、オンナに関して忌み嫌う決めつけをスライドさせたりしてませんかね。それと、私は、まず日常ありき、で、そこから徐々に大きなものが見えてくる視点でずっと暮らしてきちまいましたが、大局的な視点の持ち主は、まず大前提の正があって、どんな些事でもそれと照合させるのだな、と妙に感心しました。それにしても、マチズムな男はバカっぽくて、フェミニズムな女は賢そうなのはなぜ?こういう見解こそフェミニズムの敵ですか。

 
  石井 英和
  評価:D
  まず、「フェミニズムを支持する男」の欺瞞性に言及している点を評価したい。男に生まれて男として育った、被告席に座るべき存在。にもかかわらず、「私はフェミニズムの理解者だ」として自らに免罪符を発行し、勝手に検事席に紛れ込んで「女性の開放」について説教たれたりしている奴には一言言っておくべきだ。一方、この書全体にはひどい閉塞感が漂っている。それは著者が、男中心社会の抑圧から自由になるためにと手にしたフェミニズム思想に、逆に幽閉されてしまっているから。男社会の牢獄から女性を自由にするはずの思想が、今度は別の牢獄として彼女の視野を狭窄に追い込んでいる。自由を求めた結果、得たものが、世界を「フェミニズム教」の教義の鋳型に無理やり押し込めるようとして叶わずに苛立つ、検察官の立場だなんて。解放に至る思想って、そんなものなの?

 
  中川 大一
  評価:C
  初っ端から連発される卑語の数々。オチンチン・オマンコ・アナル……。うーぬ、最後までついていけるかな。だがほどなく、言葉づかいは強烈でも中味は至極真っ当であることが判明する。痴漢は卑劣、強姦は許せん! 周知のように、フェミニズムには様々な党派がある。近代をどう評価するのか。男との共闘は可能か。いくつもの論点をめぐって死闘が繰り広げられ、それが一般人を遠ざけている。著者は、そんな学問上のセクショナリズムに絡め取られるのを注意深く避け、日常感覚からの出発を心がけているようだ。よって男にもとっつきやすい内容になっているが、一面でツッコミが弱いようにも感じられる。本書は、その出だしとは裏腹に、まじめなフェミニストによるまじめなマニフェストの書なのであった。

 
  唐木 幸子
  評価:A
  オンナ泣きって何かなあと、全く期待せずに読み始めたのだが、よっしゃぁ!と机を叩くこと幾たびか。オトコのトンチンカンを実に的確に冷静に描いていく筆致は、私が尊敬するジャーナリストの故・千葉敦子さんみたいだ。この著者、若いのに偉いっ!。あー、でも本当は私、思い出したくなかったんだ。物心ついてこのかた、私の前に立ちはだかった何人もの石原慎太郎のことを。自分が正しいと信じて疑わず、大威張りで語る内容の滑稽さを自覚しない大馬鹿者は老いも若きもいたっけ。阿呆を相手の時じゃないと横をすり抜け、戦い、排除したおかげで幸い、夫は賢いし、威張る男は蹴飛ばせる職場環境を得て、私は今、心の平安を得ているのだ。もう、考えたくないのだ。なのに流した悔し涙まで思い出してしまったぞ。

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