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   島津奔る
  【新潮文庫】
  池宮彰一郎
  本体 各667円
  2001/6
  ISBN-4101408165
  ISBN-4101408173
 

 
  大場 義行
  評価:C
  残念ながら、国を守る為に、知恵と勇気で勝負する島津義弘を見て、うむう、ビジネス書だ、などとは全く思えず、ただただ合戦の場面で興奮するしかなかった。となるとこの本は物足りなく感じてしまう。軍記物のように熱い話ばかりではなく、国(=会社など)を守るには、優れた指導者とはみたいな台詞も多々混じってくる。これが説教くさく、せっかくの興奮が一気に冷めてしまったりもした。やはりこれはビジネス書もしくは人生指南書好きの方がはまるかも。たしかに朝鮮出兵の話や、有名な関ヶ原の正面突破、関係ない所で島左近がごりごり出てきて、あるていどは熱くしてくれたのだが。熱い軍記物好きには不向きな感じが。

 
  小久保 哲也
  評価:D
  ふと見ると、ベストセラーのリストにこの本の名前が挙がっていた。そうなんだ。結構いけてるのかもしれない。と、がんばってみた。まぢで。でも、敢え無く敗退。どうも、最近この手の作品が読めません。読み始めて2ページでなんだかむずむずしてきて、3ページで目がページの上をさまよい始め、4ページ目で、ついに付いて行けなくなり、脱落。この作品は漢字はそんなに多くなく、難しいわけではなかったのですが、文章のリズムがどうしても入ってこない。。。やっぱり、合わない作風というのはあるのだなぁと、またもや考え込んでしまった次第でございます。(読んでもいないのになんで評価がDなのか疑問の人は、これ以上に読みにくかった『芸能人別帳』の採点も見てね♪)

 
  山田 岳
  評価:AA
  <豊臣秀吉亡きあと、朝鮮半島で転戦中の日本兵をいかにぶじに帰還させるか>この問題をきちんと考えた人は日本の中にはいませんでした。現代のわたしたちもなんとなく、停戦交渉がすぐにできて帰ってきたのだろうとおもうばかりです。実際には、戦意をうしなった日本兵をたたきのめそうと、明・朝鮮連合軍が手ぐすねをひいて待っておりました。この問題をただひとり考えていたのが島津義弘。島津軍が30倍もの敵兵を一手にひきうけて壊滅させ、時間をかせぎ、日本兵の帰還を果たしたのでした。<朝鮮出兵、どうしてこんな無益な戦さを行ったのか>老いてボケた秀吉の愚行というのが一般的ですが、義弘は「戦乱がおさまったら不景気になる」と、その真相を見抜いています。いわく、戦国日本経済をソフトランディングさせるための出兵であったと。これだけ大局=政治のうごきやら、戦争のゆくえやらが読める義弘が、<どうして関が原の戦いでは西軍として参戦することになってしまったのか>「敵前突破」だけで語られることの多い島津の関が原ですが、そこには、どんな意味があったのか。それが戦後処理とどう関係していたのか。たんなる歴史物語でおわらない本書の魅力と言えそうです。

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