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双頭の鷲
【新潮文庫】
佐藤賢一
本体 各781円
2001/7
ISBN-4101125317
ISBN-4101125325
石井 千湖
評価:A
二晩夜更かしして、三回泣いた。豪奢な武具を身につけた名もない騎士が倒れるところから始まるプロローグからしてうまい。見かけ倒しの騎士道の敗北のあとにあらわれた、戦の天才ベルトラン・デュ・ゲクラン。粗野で下品でいつまでも大きな子供のようなこの男、めちゃくちゃかっこいいのだ。無駄に戦いを仕掛けない。天才だから負ける戦いはわかる。それでも好きな人のためになら戦う。これぞ騎士の心意気ってやつじゃあないだろうか。ベルトランを一途に愛するティファーヌがまた凛として深みがあっていい。従兄弟のエマヌエルなど仲間たちもいい味だしてる。後半はハラハラしたり悲しい場面が多いけど読後は晴れ晴れとした気持ちになることうけあい。
大場 義行
評価:A
これはもう文句のつけようが無い。とにかくオモシロかった。熱い男ども女どもの物語で感動し、熱くなり、そしてその先にあるむなしさに呆然とする。知られざる戦の天才ゲクラン元帥のキャラクターに最初はとっつき難かったが、馴れてくると、もうダメ。一緒になって喜んだり、泣いたりしてしまう。それにあの黒太子エドワード、太陽王シャルル五世など有名人もいい感じだし、もうほんと楽しめましたです。それに、なんとなくだけど、佐藤賢一の人柄のせいか、文章に温かみがあるところもいい。参考文献はみな原書という所といい、この温かい文章といい、なんか佐藤賢一にはまりそうな予感がしてしようがない。
小久保 哲也
評価:AA
もし何も知らずにこの本をお店で手にとって、ぱらぱらと数ページ読んだときに、買って読むかというと、僕は買わないと思う。それがとにかく残念で仕方が無い。こうして課題図書になっていなければ、間違いなく読むことの無い本の一冊でありながら、しかし、これほどまでに面白い。はたして書評も読まず、もちろん課題図書もない人たちにこの作品を読んでもらうには、どうしたらいいのだろうかと悩んでしまう。稀代の軍師を主人公に、フランス国王、イギリス皇太子たちが絡み合い、その当時のヨーロッパ諸国を背景として進むこの物語は、壮大な歴史物語。数年後には、また読み返すだろうことを予感させる、ひさびさの名作だ。
佐久間 素子
評価:A
『本の雑誌』誌上で、あれだけ絶賛されたので、今さら大騒ぎをするのはどうかとも思うのだが、大騒ぎするほど面白い。気になっている人は絶対に読むべきだ。というか、気になっていない人も、だまされたと思って読んだ方がいい。これだけのボリュームなのに最初から最後まで飽きさせることないストーリー、個性的で魅力あふれる人物たち、愚かでいとしい人間への思いと、全編をつらぬくたまらない爽快感。よほど活字や物語との相性が悪くないかぎり楽しめるはず。これはもう、極上の娯楽である。とびぬけた軍事の才をもちながら、幼児性を残す主人公ゲクランは、前代未聞にかわいらしい。その才を見たくて、それ以上にその性質を守ってあげたくて、人はゲクランのもとに集まってくる。読者もまた同じ。そして、頂点をきわめて、おちるしかない彼の晩年に、守るという行為の意味を知る。たとえ幻想でも、自分の心に生まれる気持ちは美しく、それはほとんど生きるための理由といってもいいと思う。
山田 岳
評価:C
フランス中世の歴史に関心のある人やったら、ええねんけどな。『傭兵ピエール』の佐藤賢一やさかい期待したんどすえ。軽井沢の別荘で、ほかになーんも読む本がおへんような状況やったら、この本読ましてもろて、そのままうとうとお昼寝さしてもらうのも、よろしおすなあ。東京よりあ’つい京都にいてて、時間に追われて読まなあかんのんは、ちょっと堪忍しておくれやす。主人公ベルトラン・デュ・ゲクランが出てきはるのんが55ページ。それだけでも、長い長いお話とわかりますやろ。老後の楽しみにとっときます。
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