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  赦されざる罪  赦されざる罪
  【創元推理文庫】
  フェイ・ケラーマン
  本体 1260円
  2001/6
  ISBN-4488282091
 

 
  石井 千湖
  評価:C
  女は誰でも母になることを望むものなのか?私にはよくわからない。自分には子供はないけれど、他人の子供を見ると単純に可愛いと思う。子供好きなわけではない。ただ、可愛らしいものだなと眺めるだけである。いい年をして結婚までしていながらどうも子供を持つことがどういうことなのかピンとこない。個人的にいろいろ問題を抱える身なので、この物語の根幹のテーマである「母性」とか「家族」に拒否反応を示してしまう。ゴメンナサイ。ミステリーとして読むと肩透かしをくらうけど、ユダヤ人家庭の風習とか、ボディビルディングの描写は興味深かった。アメリカだなー、と意味もなく感心。

 
  内山 沙貴
  評価:C
  これもまたぶ厚い本だが長さを感じさせなかった。私の中ではあるべき姿のまま破綻せずにいる家族というのはなかなか想像が出来ないけれど、この本の主人公の家族はなぜか安心できる。“あるべき姿”なのかもしれない。題名が「赦されざる罪」、事件はまだ生まれたばかりの新生児誘拐という凶悪犯罪の相を呈していたが、収まるところはどこにでも在る人の影であり、WANTEDの張り紙に描かれた凶悪犯罪者ではない。忍び寄る手などなく、純然たる事実が残るのみのドライな捜査。ぞっとするような心は暴かれないし、それなりの救いの手は差し伸べられる。ひたすら暗い救いようのない推理小説かと思っていたのだが違った。おかしな云い方だが、安心できる推理小説だった。

 
  大場 義行
  評価:C
  赤ちゃんが盗まれるというショッキングな事件だし、隠された重いテーマがあるにも関わらず、それよりも面白そうなのは主人公家族。主人公の妻の出産、娘の健気な奮闘など。と、なると、やっぱりシリーズ最初の方から読んでいないと、この本の楽しみは激減になるのではないだろうか。どんな妻なんだろう、この娘はどんな感じで成長してきたのだろう、この巻の前にはどんなエピソードがあったのだろうと色々思ってしまう。今の状態では、この本はイマイチ楽しめないけど、シリーズ最初から読んでみれば相当印象が変わるはずとしか言いようがありませんです。

 
  操上 恭子
  評価:B
  これも長く続いているシリーズの1冊。初めて読んだのだが、シリーズ物につきものの読みにくさはなかった。ストーリー的にも、読者をぐいぐい引っ張る力強さを持っていて、長さを感じさせない。ページ数のわりには、登場人物がとても少ないことに読み終わってから気づいた。容疑者も少ない。謎解きにウェイトを置いたミステリではないことのあらわれだろう。主人公デッカーの家庭が、複雑な関係なのにおとぎ話のようにうまくいっているのが不自然なようで気になったが、あとがきによると作者は確信犯らしいのでいいことにしよう。それにしても、最近のミステリの犯行の動機をなんでもかんでもPTSDに求めるのはどんなものかと思ってしまう。心理学的にはそれが正しいのかも知れないけれど、ミステリとしては面白みに欠けることになっているのではないだろうか。

 
  小久保 哲也
  評価:B
  「人生は学校じゃない。すべてにAをとる必要はないんだよ」 登場人物たちが話す言葉や態度の端々に、生きていくことの優しさが含まれている。ミステリーとしてよりも、登場人物たちの悩みや、喜び、そして家族と共に生きていく姿がとても印象的。もちろん、あまりにできすぎた家族像であるというのが、まるでアメリカン・ホーム・ドラマを彷彿とさせる嫌いはあるけれども。全体としては、かなりの分量であるが、それを感じさせない巧みなプロットとテンポの良い文章は、読み進むのが惜しい気にさせる。シリーズ六作目ということだが、第一作から読みたくなる作品だ。

 
  佐久間 素子
  評価:C
  どちらかといえば国産派なのだが、このシリーズはかかさず読んでいる。事件そのものは凄惨にすぎて好みではないけれど、レギュラー陣が魅力的なのだ。敬虔なユダヤ教徒であるリナを愛するが故に、自分の立ち位置を模索し続けるデッカーの姿には、毎度感動させられる。しかし、今回はいまいち。核になる赤ん坊誘拐事件が、あまり盛り上がらない。レギュラー陣以外の人物に精彩がない。著者の愛情に守られたデッカー家に比べると、あまりにも冷たい扱いだ。そして訪れる致命的にむなしいラスト。そういえば、前作もあまり印象に残っていない。このまま失速してしまうのかなあ。4作目の感動をもう一度、と切に願う。

 
  山田 岳
  評価:A
  646ページの大作をわずか3日間で読みきったとは、じぶんでも信じられへん。最初の130ページは全くのホームドラマ。け’ど、主人公のデッカー巡査部長(刑事)と彼の家族にとっては、妻の出産とそのあとの異常出血・緊急手術いうのんは大事件やねんな。おなじ病院でおこった赤ん坊の誘拐・看護婦の失踪事件。デッカーの捜査を大学生の娘が手伝いたがる、いうのんも、心温まる話やおまへんか。「犯人の方にも家族愛があった」という結末に、茶○さんは大泣きしはったんと違ゃうか?女性には、とっても身近で、翻訳もこなれて、読みやすい1冊。け’ど、膨大なストーリーにもかかわらず、タネあかしのページがあまりに短く、ご都合主義のかんじがせんこともないなあ。

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