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  ハートウッド  ハートウッド
  【講談社文庫】
  ジェームズ・リー・バーク
  本体 933円
  2001/7
  ISBN-4062732033
 

 
  大場 義行
  評価:C
  主人公が弁護する貧乏人をいじめる金持ちや、悪ガキどもと裏の話、どこがどう繋がるのか見えてこないので、確かに楽しめるかもしれないが、どうしてもだらだら続いているように思えて仕方がなかった。ただ、自分は、不思議な現象を当たり前のように受け入れていて、当たり前のように読者に納得させている所はなんだか良かったなあ。例えば主人公は旧友の亡霊を当たり前のようにみているし(しかも格好いい事をいったりもする)、依頼人の奥さんなんてなんでも見えちゃう。この話でこんな所で興奮するのはおかしいかもしれないけれど、この設定は面白かった。まあ、設定がいいからなんだといわれると、ちょっと困ってしまう。

 
  操上 恭子
  評価:E
  まず「私」という主人公がいて、私の視点で物語が始まる。ところが、やがて物語は私が登場しない場面になる。視点はいつのまにか神の視点。一人称と三人称の部分が混在していて、とにかく読みにくい。どうやら三人称部分は人から聞いた話ということのようだが、あまりにも説明不足だ。主人公ビリー・ボブの魅力も伝わってこない。庶民の味方の弁護士にもなりきれていないし、元テキサス・レンジャーのこわもてにしては情けない。ロマンスの面でもまったくいい所がない。単に根暗ですぐキレる危ないオヤジという感じ。インディアンやメキシコ人に対する差別的視点も気にかかかる。

 
  小久保 哲也
  評価:D
  なんだろう、別にこれといって問題はないのだけど、だからどうだという部分もない。結構分量がある割りには、読み進むのに疲れないところを見ると、読みやすい文章だなとは思うし、話の展開も悪くない。ただ、話のテンポが、ずーっと一緒。もちろん、山もあれば谷もあるんだけどでも、読んだ後それを感じさせない。疲れない替りに、大きな喜びもあまりないという、言ってみれば、「近所のお散歩」系の作品と言える。みんなも「近所のお散歩」に行くと、道端の花とか、近所の店先とかを覗いて、それなりに楽しいと思うけど、でも、だからといって、「近所のお散歩」にワクワクしたりしないでしょう?まさにそんな感じの読後感だから、この作品のジャンルは、「近所のお散歩」系に決定。もしも「お散歩系選手権」があれば、かなり上位に食い込むこと間違い無し

 
  佐久間 素子
  評価:D
  繊細なヒーローの、繊細なハードボイルド。私はちょっとがさつ気味なので、思わせぶりな語り口がもどかしく、読みづらかった。主人公が誤って殺した友人の幻も、盲目のインディアンの女性が告げる抽象的な予言も、あざとい気がして好きじゃない。主人公にとっての、永遠のあこがれの女性もちっとも魅力的には思えない。その女性が主人公の行動原則になっている部分が大きいので、理解できないのもしようがないことなのだ。こういうセンチメンタリズムはあいにく苦手でね。ただし、暑い夏のけだるい午後、さわやかな朝など、空気感は抜群。アメリカ南部の閉じた空間には、思い出がとじこめられちゃうのかもしれないな、とも思う。

 
  山田 岳
  評価:B
  アメリカ南部の自然が美しく描かれている。でも、出てくる人間はどいつもこいつもクレイジー。主人公のビリー(弁護士)さえもが、青春の日の思い出に幻惑されて、依頼人や下請け女性探偵のひんしゅく・失望をかう始末。アメリカ人は、田舎の弁護士からクリントンにいたるまで、やっていいことと悪いことの区別がつかなくなっているらしい。さて、話はアール一家の悪行の数々に、お人よしのビリーもついに堪忍袋の緒が切れて、テキサス・レンジャーに大変身。馬にまたがり、ショット・ガン片手に、投げ縄をふりまわす。アメリカの水戸黄門(爆)。それにしても、アメリカの小説にはどうしてこうもクレイジーな人間ばかり出てくるのか? (1)アメリカ人はみんなクレイジー(2)アメリカの作家はクレイジーな人間がすき(3)アメリカの読者はそんな人物ばかり出てくる小説を読みたがる(4)日本の編集者はそんな話ばかりを翻訳したがる。さて、正解は?

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