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  池袋ウエストゲートパーク  池袋ウエストゲートパーク
  【文春文庫】
  石田衣良
  本体 514円
  2001/7
  ISBN-4167174030
 

 
  石井 千湖
  評価:B
  帰りの電車で読んでいたら最寄り駅で降りそこなった。連作なのに読むのが止められないくらい面白い。まず90年代末の東京の風俗がぎゅっとつまっている。そして、非常にまっとうなミステリーである。とどめに主人公のマコトがかっこいい。実は細部を取り除いて骨格だけ見れば昔からある泥臭い青春小説だけれど、あまり感じさせないところがうまい。賢く優しい不良少年というのはいつの時代もヒーローなわけで。個人的なお気に入りは、オタク少年と引きこもり少年が大活躍の『サンシャイン通り内戦』。赤い服と青い服のチームの抗争、なんてヤンキーセンスあふれるところもたまらない。展開には多少都合良すぎる点があって気にならなくもないけど楽しかった。

 
  内山 沙貴
  評価:D
  薄い霧の向こう側で繰り広げられる、若者の世界。暴力の世界と呼ぶには大人しすぎて、でも野蛮で直裁的な社会。白霧の中では目の前にいる他人の顔はおろか自分の指先でさえも見ることがままならないがそこに住む若者たちは霧の中を安全に進む本能を持っている。味方か敵か、手を出すタイミングは、逃れるコツは…どこの社会にもある視界を阻む霧だが池袋の霧の場合読みを誤ると結果はすぐに出てきて身を痛めることになる。東京の大都会池袋、熾烈で過激でちょっと文明からはずれたような街は、いつも大都会の隅々にある。

 
  大場 義行
  評価:A
  これ実は最初ドラマで入りました。と、いう事で、若干主人公マコトがトキオなのですが、やはり本で読む方が抜群に面白い。輸入物ハードボイルドの焼き廻しでもなく、最近流行のノワールほど過剰でなく、重すぎず、軽すぎず、読んでいて妙に心地が良い本だった。なんだか石田衣良独特なんだよなあ。新しい国産ハードボイルド。個人的には一番長い、チーマーGボーイズvsレッドエンジェルスの話「サンシャイン通り内戦」よりも、阿呆なガキの安易でムカツク事件「エキサイタブルボーイ」が一番良かった。マコトの友人でヤクザになったサル。こいつの熱くて哀しい話が、いつおきてもおかしくないような事件を、面白い角度から見せつけてくれた気がしている。

 
  操上 恭子
  評価:A
  ずっと気になっていた本なのだが今回初めて読んだ。今まで読んでいなかったのがもったいない、素直にそう思った。設定がなんといっても上手い。何よりもよかったのは、主人公マコトを大人でも子供でもない19歳、ヤクザでも堅気でもない稼業手伝い・無職にしたことだろう。どの社会にも属さないコウモリのような存在でいながら、しっかりと地に足をつけて、というか地元に根を張っている。探偵役として、これほど適した存在があるだろうか。日本のストリート探偵物という新しいジャンルを作る作品だと思った。連作短編の1作ごとに作風、登場人物たち、そしてこの新しいジャンルの成熟していく様が見て取れる。マコトの今後の成長が楽しみだ。

 
  小久保 哲也
  評価:AA
  とにかくこれはすごい。「日本ミステリー連作の傑作」とあるが、まったくそのとうり。池袋を舞台に繰り広げられるストリートな世界と、一話づつ成長していく主人公の姿が重なり合って、久しぶりに目が離せない作品になっている。似た雰囲気のある海外作品も思い付くけれど、おんなじ言葉を話し、おんなじ空気を吸っている分、この作品の方が圧倒的に感情移入ができる。文章の構成も面白い。こういうのを断章構成と呼ぶらしい、というのは本書の解説を読んで初めて知ったのだけど、そんな名前なんてどうでもよい。とにかくスピーディ。ぱっぱと進んで行く場面は、とってもヴィジュアルだ。この作品を課題図書に選んでくれた人に、ただただ感謝あるのみ。

 
  佐久間 素子
  評価:B
  池袋の10代なんて、エイリアンみたいなもんだ。という偏見持ちでも、心配無用の、オーソドックスな青春小説である。ちょっと意外なくらい保守的に思えるのは、マコトたちの、笑いや怒りや悲しみに共感できるから。そして、何を大切に思うのか、何を憎むのかという価値観が、まっとうすぎるほどまっとうなものとして、現れているからだ。もっとも、そのまっとうさが泥臭くないのが、今時なわけで、クールで軽やかな彼らは、とってもかっこいい。若さゆえに不様なサブキャラクラスでも、やっぱりかっこいい。今時をえがくにはありきたりすぎる展開の表題作も、ありきたりに堕ちないすがすがしさがある。続編も読もうっと。

 
  山田 岳
  評価:B
  翻訳調の文体がめっちゃクサイ! 関西人にはうけへんやろな(笑)何をそんなにきどってはりまんの、言われて。池袋を舞台にしたストリート・ライフ。この<疾走感>はイメージとしての<東京>やねんけど。池袋って、こないに、かっこよかった?プロット、スピード感は言うこと、ありまへん。若者が赤と青のチームに分かれて抗争、いうのんは、何年かまえにテレビ番組で紹介されてたのんを見たことある! ほかにも、援助交際、スピード(薬)など、素材のつかみ方が、なかなかリアルやね。

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