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   ネバーウェア
  【インターブックス】
  ニール・ゲイマン
  本体 2,400円
  2001/7
  ISBN-4924914347
 

 
  今井 義男
  評価:AA
  <扉>という概念を支配する少女・ドア。私はまず彼女に強く惹かれた。次いで個性的な二人の殺し屋・クループ氏とヴァンデマール氏。それにドアと主人公リチャードに同道するクールな護衛・ハンター。みんな仮想の地下世界ならではのダークな色彩に満ちた第一線の役者たちだ。皮肉なことに、彼女たちの前ではやがて姿を現す敵役すらもかすんでしまうのである。地下と地上が同時に存在し、干渉し合わないという設定もよい。やっとのことで日常に戻れたリチャードの選択肢には深く同意できる。作家の創造する世界に足を踏み入れる至福。それを予定調和としか受け止められない人にファンタジーは不向きである。本書にも読者を選ぶ一面があり、誰が読んでも面白いとは限らないが、好きな人はもう二度と抜け出せなくなるほどにはまる、危険極まりない小説である。キングの<絶賛>には度々騙されてきたが、今回はクライヴ・バーカーのお墨付きもあるから信用して大丈夫。これまでに読んだファンタジーの中でもベスト10級の傑作。

 
  石井 英和
  評価:A
  スト−リィは、なんらかの「欠落」を負わされた主人公が謎に満ちた試練の旅をし、その欠落を埋めるための何かを手にする、というファンタジィの基本線を踏襲している。現実のロンドンの下に広がるもう一つのロンドンという興味深いアイディアに基く地下の暗黒世界の、イメ−ジ豊かな描写を堪能した。このイメ−ジの乱舞は、著者本人を育んだ文化との戯れ合いの性格が強く、我々海の彼方の異文化の中に育った者には、その意味を完璧に読み取るのは難しいかとも思われるが、まあ、分かる範囲でと言うことで。元々が現実とはかかわりのない、空理空論の純物語であるファンタジィは、実は私には思い入れが難しく、苦手な分野だったのだが、そのイメ−ジ群の底に込められた苦いユ−モアのスパイスのお蔭で、抵抗なく読み進むことが出来た。

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