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  凶運を語る女  凶運を語る女
  【扶桑社ミステリー】
  ドナルド・ジェイムズ
  本体 (各)743円
  2001/7
  ISBN-4594032001
  ISBN-459403201X
 

 
  大場 義行
  評価:C
  この本の評価はちょっと微妙。ラインにはいっているか微妙なんだなあ。悪い点は、この本の物語自体が迷宮化といえるほど入り組んでいる所。未来のロシアを舞台にしている上に、殺人鬼が暴れているかと思えば、政治の絡みが見え隠れしたりする。これだけでもワケわからんのに、執拗なまでにミスリードを誘ってくる。お陰で一時期挫折しかけた程。でも、主人公の刑事や、協力しているFBIの女性捜査官、V.I.レーニンなど、魅力的な登場人物が豊富。しかも舞台のロシア自体が段々と魅力的に見えてくるのだ。実際この前作にあたる「モスクア、2015年」も購入してしまった程。うーん、面白いかどうかはともかく、舞台と登場人物には惹かれた、という所かなあ。と、いう事で一応のCにしました。

 
  山田 岳
  評価:A
  上巻は疾走した妻を主人公コンスタンチン・ヴァジム上級捜査官がおいかけるミステリー。下巻はその妻が子どもの国際的人身売買阻止にかかわっていたために生じる謀略の数々。つまり「一粒で二度おいしい」。二転三転するプロットもいい。上巻120ページでコンスタンチン自身が容疑をかけられブタ箱に放り込まれる、『汚名』との偶然性には笑った。舞台は2017年のロシア極北の町ムルマンスク、主人公コンスタンチンは「くそいまいましい道徳的な考え方」をする人物なのに、アメリカのハードボイルド小説のように「おれが」と語り、「ちきしょう」とののしる翻訳に「それはないんじゃない?」と、違和感をおぼえた。とまれ、イギリスの作品としては、今年ナンバーワンのでき。

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