年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
     
今月のランキングへ
今月の課題図書へ

商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
 
  R.P.G.  R.P.G.
  【集英社文庫】
  宮部みゆき
  本体 476円
  2001/8
  ISBN-408747349X
 

 
  石井 千湖
  評価:C
  出る前からものすごく楽しみにしていたのでなんだか拍子ぬけ。かなり最初のほうにオチがわかってしまったからだ。なるほど文庫書き下ろしにしたのは正解かも。すーっと読めて内臓にもたれない。『模倣犯』はずっしり重くてまさにメインディッシュ級の読みごたえがあったけど、こちらは食後のデザートという感じ。どちらが好きかといえば『模倣犯』だけど、ああゆうのばっかりじゃお腹を壊す。それに家族の「暗闇」をねっとり描かれるのは辛いしこれくらいの分量で助かった。実感したのは親がちゃんとした意味での「大人」であるとは限らないということ。愛情というのは勝手な思い込みに辛うじて支えられている脆い幻想だということ。

 
  内山 沙貴
  評価:D
  ひたすら捜査をかく乱する事に執心していた真犯人の、妨害の網をすべて破って事件の真相を見破った素晴らしい老刑事。しかし老刑事は土壇場で病欠のため、代打で出された中年刑事が事件の真相究明を継ぐ。真相を見抜いた老刑事はすごいが、しかし全編を読み終えてみると中年刑事の働きも素晴らしく見えてくる。ただブロックの積み上げゲームを下からきれいに逆算したような出来過ぎたプロットが気になる。最後の刑事たちの働きに対する感動と、出来過ぎた物語の不満足な感じが漂う、複雑な心境におちいる読了感だった。

 
  大場 義行
  評価:B
  ごっつい読み応えの「模倣犯」を読んだ為か、妙に物足りない。厚さが足りないのもあるが、味わい深いじじいキャラが居なかった為かもしれない。とはいうものの、「クロスファイア」「模倣犯」の両方の刑事がタッグを組むというお祭り的な要素もあるし、またもや正義とはなにかと考えさせられたり、心理的にきつい話であるので、楽しめた。個人的にはこういった色々な物語の人々が繋がるのが好きなので、もっと書いてくれないかなと、思うのである。

 
  操上 恭子
  評価:B-
  これは「さすが」と言わざるを得ないだろう。「やられた」とも。最初に一読した時には、あまり意味のないページ稼ぎのように思えたのだが。数十ページの短編の内容しかないのに、何でわざわざ文庫で書き下ろしまでしたんだろうと。そんな不純な気持ちで読んでいるから、最後まで読み終わってからもう一度最初にもどって読み直さなければならなかった。そして、実に細かいところまで細工が行き届いていることに気づいた。本当にうまい。だが、2回目を読み終わって、ひたすら感心した後には、なんとも物足りなさが残った。素晴らしい技巧なのだけれど、ただそれだけという感じ。一遍の小説としては、かなり弱い。本作の主な登場人物は『模倣犯』と『クロスファイア』の刑事達だから、それらの番外編としても読めるのだろうけれど、それだけでは淋しい。

 
  小久保 哲也
  評価:B
  宮部みゆきの作品ということで、それ相応の期待をして読んだのだけど、さすがというか、なんというか、ミステリーとしては、期待通りだった。のだけど、例えば、彼女の書く時代物系や、最新刊の「模倣犯」にあるような、心の中の悲しさとか、やさしさとか、そういった部分の手応えが少なかったのがとても残念。分量が300ページ弱というのが原因なのかもしれないが。もちろん、だからといってこの作品がつまらないわけではない。ただ単に、もっと楽しみたかったという贅沢な愚痴を言ってみただけだ。

 
  佐久間 素子
  評価:B
  一幕物の舞台のように、事件の導入部以外は全て警察署内という設定。ちょっと地味で物足りないかな、とも思うが、文庫書き下ろしという形態を考えると実にお買い得(五百円玉ひとつで買える!)。謎解きのあと、ああおもしろかっただけに終わらせない、犯人への厳しくも優しいまなざしは、まさに王道の宮部節だ。時代が進んで小道具がふえたって、人間の心はそうそう変わりはしないのだと、ぐっとくる。読後、清水義範氏の解説が気になったのだが、タイトルの意味を間違えてやしないか。R.P.G.って、ネット上の家族ごっこのことだよなあと思うが。そう解釈すると、もう一つ掛けられているのだが、これは言えない。読んでから、なるほどねーと思って下さい。

 
  山田 岳
  評価:AA
  めっちゃ、おもしろい。ひさびさのイッキ読み。ネット上の擬似「家族」、その「お父さん」が殺された。その犯人は? ってストーリーなんだけど、これ以上ふれると、ネタばれになりそう。こまった(笑)。面通しがはじまったあたりで、犯人がなんとなくわかってしまうというのは、ミステリーとしては、どんなものか。それよりも、事件を通して、現在の家族の姿があぶり出されているのが、本書の魅力といえよう。家のなかでは妻や娘と心を通わせることもなく、外で若い女を追い掛け回してばかりいるのに、会社やネット上では親切にふるまいたい、頼りにされたい「父親」が、滑稽で、やがて悲しい。タッチもかろやかで、ふだん本を読まない人でも、すらすらと読めるのではないか。でも、どこが「ロール・プレーイング・ゲーム」なのか、もうひとつ、よくわからなかった(自白を引き出す過程が、ある種のゲームではあるかもしれないが)。イントロとアウトロは枚数あわせのために書き足した、という気がちょっとした。

戻る