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  ショッピングの女王  ショッピングの女王
  【文春文庫 】
  中村うさぎ
  本体 429円
  2001/9
  ISBN-4167658011
 

 
  石井 千湖
  評価:B
  うさぎ女王様ほどではないけれど買い物は大好きだ。衝動買いはしょっちゅうで、借金こそないものの毎月綱渡り状態。私の場合、服ばかりではなく本とCDとライヴのチケットでもお金がひゅんひゅん飛んでいく。そんな浪費家にとっては「上には上がいる」とひと安心のエッセイだ。一生ものだからと言い訳せず、ブランド物はブランド物だから欲しいのだ、とキッパリ言いきる潔さがいい。高い代金を払って失敗が多いのも面白い。特に雨の日はさせないシャネルの傘の話が笑えた。装飾品は実用的ではないからこそ価値が高いのかもしれないけど。保険証を差し押さえられても、むじんくんのお世話になっても、見栄のためなら懲りない女王様!天晴れ。

 
  内山 沙貴
  評価:B
  収入のことを全く考慮に入れずにブランドものを買いまくる。何だこの人は?この人の買い物の量もさることながら個々のモノにかけている金額はめちゃくちゃに高い。自分が持てる金額が増すにつれて買うモノの値段が上がるのは分かる。高いモノを買うことに慣れてしまうと、以前とはお金の価値感が変わっていくのも分かる。以前だったら絶対に買わなかったようなくだらないシロモノにまで、高くないからを理由に手を出してしまう。そしで家計は慢性的に借金状態である。窮地に追い込まれた悲壮感が全く無く、すべて日常茶飯事、世は並べて事無しの空気が漂う、恐ろしいエッセイであった。

 
  大場 義行
  評価:C
  派手にブランド品を買い漁るうさぎ先生かと思ったが、案外買っていない事にがっかり。「毛穴きゅっぽん」とか「歯のマニキュア」、「ド忘れ辞典」等予想外の女王様らしからぬ買い物が目立つ。装幀も女王様らしからぬイラストだし(個人的には好き)。もっと激しいヒトいるでしょ。死ぬほどモノを買い漁ってしまって、地獄のような借金に追われながらも、「おほほ」とまた財布を開くという事を想像していたのに。確かに買っているらしいのだが、それも伝わってこないし。なんとなくテキトーに買ったもので原稿埋めますですわという感じ。でも、品評会で優勝した処女牛かずひめ(五人で十七万)は喰らってみたいなあ。

 
  操上 恭子
  評価:B-
  やくたいもない買物話だと思っていたら、後半になって雰囲気が一変した。この人、本当にすごい。もう完全に病気。たとえば同じ借金地獄にのたうっていたとしても、ギャンブルにハマっている人とかならば、万が一いや百万分の一くらいは、金を取り戻して借金を返せる可能性もある。ところがこの女王様ときたら、金は使う一方。高級ブランド等にバンバン貢いでしまう。しかもその買物も失敗ばかり。なんというか、ここまでやってくれると、かえって爽快だ。本書の後半で本性をあらわした女王様は、筆舌さえまくり、毒舌もバンバン吐いて、こちらも爽快。それにしても、たとえ借金にまみれていたとしても、年に2000万も無駄遣いできるなんて、半端じゃない稼ぎがあるってことだよね。すごいなあ。合掌。

 
  小久保 哲也
  評価:A
  「ショッピングの女王」とはよくも言ったもので、後から後からいろんなものを購入していくその姿を見ると、まさに人生を楽しんでいるなぁと、感心すると同時にうらやましい。それに加えて、著者が見る視線のなんとクールなことか。それは回りだけでなく、自分自身の行動についても実にクールに分析している。面白可笑しく書いてはいるが、それが余計に独特な視点を際立たせている。忙しい毎日で、疲れている人に超おすすめ。毎日を楽しく過ごす処方箋付き。

 
  佐久間 素子
  評価:E
  1時間で読めるが、1時間もかける価値なし。爆笑エッセイと冠している割には、ちっともおもしろくない。連載初期なので遠慮があるのだろうか、税金を滞納しても、ほしい物は絶対買うという気迫が足りない。買っている物も何だか貧乏くさいし、ただの買い物下手って感じ。読者としては、呆れたり感心したり怒ったりできるような、買物依存病の暴走っぷりを期待しているわけで、それは無責任な読み方なのかもしれないけれども、制作者側もまさか真剣に読んでもらうことを目的としているわけではあるまい。この種のエッセイが中途半端じゃ意味がないだろう。加えて、ものすごく読みづらい。いくら何でも日本語くずれすぎだ。

 
  山田 岳
  評価:A
  おなじ薬物中毒でも、女性のほうが治りにくいらしい。脳神経にある快楽物質の受容器が、女性のほうが増えやすく、なかなかへらないからだとか。ためか、バブル崩壊から10年、当時のことが忘れられない女性は今でも多い。中村うさぎもまた、お金で「女王」の地位が買えると信じたバブル世代の女性。お金がなくなった今でも「女王」の夢が忘れられない。と、書いていると噴飯ものの本のように見えるかもしれないが、本書は、抱腹絶倒の笑いに満ちている。それは、「女王」を冷ややかに見つめる、もうひとりの中村うさぎがいるからに他ならない。シャネルやエルメスのブランドでかこまれたシンデレラ城が、実は青木ケ原の樹海でしかないと、もうひとりの彼女は知っているのである。それでもショッピングがやめられないのは、快楽の受容器がへらないからであり、ブランドがもたらす「神話」「夢」にのみこまれてしまうからだろう。しかし彼女、なぜか「バレンタイン・デーにはチョコレート」という「神話」には無関心。もうひとりの方が前面に出て「男には柿の種でも食わせてりゃいいんだよ」とのたまう。これはもちろん、チョコレートをもらった男の反応を知っているから。だが、ブランドを買うのは自分自身のためであり、他者の介在する余地がないだけに、本人にも始末に終えないようだ。

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