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  【講談社文庫】
  グレッグ・アイルズ
  本体 1086円
  2001/9
  ISBN-4062732440
 

 
  石井 千湖
  評価:C
  一気読みできて面白かったのだけれど、陳腐な感じがした。アクションは派手だし、誘拐計画はよく考えられているし、幼い娘を誘拐された夫婦の葛藤もなかなか読ませるのだ。ただ映画にしやすそうだな、と思うと醒めた気分になってしまう。犯人グループの類型的な造形のせいかもしれない。解説に案の定映画化されることが書いてあって、配役も決まっているようだ。シェリル役のコートニー・ラヴなんてそのまんますぎて笑ってしまった。ひとつ読んでいて気に入ったのは母親のカレンの度胸。望まない妊娠で医者になる夢を絶たれても、娘の命を助けるためならなんでもする。ただし、自分の尊厳は守りぬくという意志の強さがいい。

 
  大場 義行
  評価:D
  なるほどと唸るような誘拐犯の手口と、その手口のために密室劇×3という舞台が生まれていて、これはスリリング。しかも誘拐された女の子は病気というハンデもある。ところが、何故か出てくる登場人物は、犯人も誘拐された側の家族も全員厭な感じだった。最初は優しそうなのにやっぱり残虐だとか、暗い過去を背負っているけどやっぱり金だとか、そんな拷問平気でするの、など、どうしても気になってしまった。あと、フランケンと少女のパターン。これはもうありがちすぎるんじゃないだろうか。設定が面白いのだが、人物に魅力がなければやっぱり力半減といういいお手本のような本だった。

 
  佐久間 素子
  評価:A
  読み出したら止まらないジェットコースター本。ラストはちょっとあっけないものの、これだけ楽しませてもらえるのだ。文句をいうのは贅沢というものだろう。良くも悪くもハリウッド映画的なできばえなので、楽しむためだけに読んで正解。裕福な医者の家庭を狙う常習の誘拐犯。誘拐を成功させる秘訣は、家族を分断させ、翌朝には身代金を回収することにある。かくして、父ウィルは出張先のホテルで美女に軟禁され、五歳のアビーは少々足りない大男につれさられ、妻のカレンは家で主犯のヒッキーと一夜をすごすことになる。離ればなれにさせられて、限られた状況で、それでもあきらめない三人の姿に勇気づけられる。

 
  山田 岳
  評価:C
  「あいつはいつもちゃんとやる。そう言ったろう」この一言からはじまる書き出しが印象的。まず登場人物ひとりがスクリーンに映り、しだいに背景がはっきりしてくる映画のワンシーンをほうふつとさせる。24時間子どもを預かり、親が身代金を払わなければならなくない状況に追い込む主犯格のジョー。誘拐というよりはゲームのようでもある。彼の一味はこの手口で、5回も営利誘拐を行い、警察に通報されることなく「成功」をおさめてきた。今度も「ちゃんと」できるのか?この一言は、これから起こる「事件」(犯人たちにとっては「アクシデント」)を予感させる。最初のひとつとして、読者の前に明らかになっているのは、誘拐された幼女アビーが、若年性の糖尿病を患っており、24時間どころか、すぐにでもインシュリンを注射しなければならないことだ。ゲームのように誘拐を重ねてきた犯人たちにとっても、これは「重荷」。ジョーは、被害者家族のまえに姿をさらし、無事に子どもを帰すことで通報をまぬがれてきたからだ。人質の死は、彼にとっても安全の確保を危うくする。予想外の状況に「完璧な手口」を誇ってきたジョー一味はどう対応するのか?アビーの父親、ウィルはただ手をこまねいているばかりなのか?そんな訳ないよなあ、アメリカン・ミステリーなんだから。

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