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  笑うふたり  笑うふたり
  【中央公論新社】
  高田文夫
  本体 667円
  2001/9
  ISBN-4122038928
 

 
  石井 千湖
  評価:B
  最近「江戸前の笑い」にすごく興味があって、寄席に行ったり落語の本を読んだりしている。古典落語が特に面白くてはまりそうな予感。そんなときに読んだので、豪華なメンツが嬉しかった。特に伊東四朗とイッセー尾形がよかった。伊東四朗は会話のテンポが楽しいし、イッセー尾形は不思議な人だ。ああ一度でいいから生で観たいなあ。全体的に感じたのは、芸人には孤独な人が多いのではないかということ。客観的でクールな知性と世間の規範から逸脱するような個性の両方が必要だからかも。お笑いは吉本(好きだけど)だけじゃないということがよくわかる本。

 
  内山 沙貴
  評価:C
  笑いの世界とは、難しいものだなあと思う。時代の風潮によって同じ話題がウケたりウケなかったりする。この対談集はすごく懐かしい感じがする。高田文夫さんが語る“笑い”は、もうすでに過去のものであって、その頃の風潮に思い合わせてその笑いを理解しておもしろいと感じることは出来ても、その時世間に広がった熱病のような涌き出て尽きることのない泉のような爆笑は今では起こり得ぬものだと分かる。輝くような思いでの小咄の引き出しを開けて、無声映画みたいな遺物を見る。少し悲しいけれど、そこに日本の笑いの衰退をみる。それを見つめる著者の目は、限りなく温かいのだけれど……

 
  大場 義行
  評価:C
  どうかなあと最初は思ったけれど、手にとって「むむ!」、読んで「おお」という感じ。なにせゴージャス! ほんと凄い人ばかりと対談。高田文夫がオモシロイつっこみをしないところは淋しい限りだが、まま良しとしよう。と言うのも、もともと昔の映画作りの話なんて好きなので、谷啓や三木のり平、伊藤四郎の話が楽しめたからだ。なんでそこまで映画監督は豪快な人が多いんだろう。ちょっと芸人話という点では、いまいちだけれども、カルト的に昔の映画話を楽しむ本。と個人的には思っていたりするのだが。

 
  操上 恭子
  評価:C+
  どこから読んでも面白いので、ついつい手に持った時にパッと開いたところから数ページから数十ページ読んでしまう。そんなことをくり返しているもんだから、この本全部をちゃんと読んだのかどうか自分でもよくわからない。目次というか対談相手の名前だけ見た時には、あまり期待できなかったのだけれど、さすがに全員笑いのプロ。少なくとも読んでいる間は充分に楽しい。巨匠ばかりだから、古き良き時代の話や偉大な先人の話も多いのだが、私自身が覚えていないような話でもそこはかとなく懐かしい。芸能好きの人にはたまらないのだろうな。だけど、読み終わってみると後に残っているものがなんにもないのに気づく。結構笑わせてもらったんだから、もう少し何か心に残るものがあってもいいのに。

 
  小久保 哲也
  評価:C
  なにが鼻につくのかよくわからないけど、鼻につく。ちょっと小賢しいという感じ。対談の相手によっては、それも少しは緩和されて、楽しく読めるところもあるのだけど。もしかすると、会話をしている時の著者のきり返しや、相手をひき込むほどの聞き上手さ、というのがあまりに上手すぎるのが、鼻についているのかもしれない。そういう意味では、会話の教材にはいいかもしれない。「テンポのよい会話入門」とかのテキストには最適と言える。

 
  佐久間 素子
  評価:B
  上方びいきというわけではないと思うのだが、対談相手の9人はビッグネームながらも、私のお笑い体験からすると、ちょっとなじみが薄い人選である。というわけで、特に期待もせず読み始めたのだが、とても気持ちのよい対談集であった。自分の好きでたまらない世界に、才能と努力をありったけかたむける姿を味わうのは気持ちいいもんだ。芸談の醍醐味だと思う。本書は芸談と言うほど、語り手に気負わせていないのだが、十分気持ちよい。それは、聞き手・高田文夫の、語り手への敬意と、好きで好きでたまらない笑いへの思いに寄るところが大きいのだろう。どの章も読みごたえがあるが、伊藤四朗と、谷啓の語りは必読(笑)。談志師匠のわかんなさ加減もある意味すごいぞ。

 
  山田 岳
  評価:B
  むかし「今夜は最高」というバラエティ番組があった。タモリを中心に、歌あり、ダンスあり、トークありの、かなり<ねられた>TVショウだったが、この番組が終わってからは、出演者が<リハーサルを重ねた>バラエティ番組を見かけなくなった。この本で著者が言っている通り、<いい学校>を出ただけのディレクターが主流になり、安い予算での番組作りが優先されて、<見せる芸>に対する見識が失われてしまったのだろう。伊東四朗、三木のり平、イッセー尾形、谷啓など、この本に登場する人たちはいずれも、練り上げられた<芸>の達人であり、話を聞く著者もまた<一観客>として演芸場にたびたび足をはこび、彼らの<芸>を愛してきた。だからこその、おもしろ芸談義なのである。この本を通して、しだいに明らかになってくるのは、「TVは<芸>を消費するだけで、<芸>を育てることはない」という、言われてみればあたりまえの、しかしTVに夢中になっている人たちには想像もできない事実である。「つまらないがあるから、面白いがある」という欽ちゃんの言葉は、放送作家セミ・リタイアの評者には、もっと早く聞いていればもっと楽に仕事ができたのに、と思わせるに充分な説得力があった。

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