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  9ミリの挽歌  9ミリの挽歌
  【文春文庫】
  ロブ・ライアン
  本体 848円
  2001/10
  SBN-4167527871
 

 
  大場 義行
  評価:A
  読了後の余りに恐ろしい虚無感。突然町で平手をあびるみたい、とはこの事だ。とにかく無意味。所々関係しているのは前作同様だけれども、「くまのプーさん」をモチーフにしているというのも無意味。主人公たちの主張も全く無意味。なにもかも無意味。ロブ・ライアン、やっぱりやってくれました。早く次回作が読みたい。とにかく自分の中ではこの無意味さが堪らなく、問答無用に面白い作品だったと思う。ただ一つ、言わせてもらえるのなら、「なぜに訳者は伏見威蕃ではないのか」という事。これのせいか訳注も少ないのではと思ったほどだ。次の「ピーターパン」を下敷きにした作品では威蕃氏を是非とも登用して戴きたい。一応、これが今月のイチオシなんだけれど、他の人はたぶんイマイチというんだろうなあ。

 
  操上 恭子
  評価:A
  ちょうど1年前に当欄で俎上に上った『アンダードックス』の作者ロブ・ライアンの第2作。前作では、設定も人物像もプロットもとてもいいのに、小間切れの文章が読みにくいとBをつけたのだが、今回は文句なし。内容の面白さはそのままに、文章も読みやすく、わかりやすくなっていてとてもいい。今度は「くまのプーさん」をモチーフにしているのだが、文中では一切それにふれず、見たい人だけが見れるように後ろに注だけをつけたのもいい。途中で気を散らすことなく、本文に集中できるようになった。
今回の舞台は東海岸のニューヨーク郊外。前作のシアトルの地下迷宮ほど刺激的ではないが、まあそれは仕方がないだろう。(カジノの街ということに刺激を感じる人もいるかもしれないが。)そんなこととは関係なく、とても楽しめた一冊だった。次作も楽しみである。本書のような、少年院(や刑務所)を出所した若者のその後の人生というのものをテーマにした作品が最近ずいぶん出てきているようだ。まあ、色々なことを考えさせられるテーマではある。

 
  佐久間 素子
  評価:C
  前作『アンダードッグス』がこのページで評判がよかったのに、読みのがしてしまって、だから、鼻息荒くとりかかったのだけれど、期待ほどではなかった。それぞれの登場人物の視点でくるくる場面が変わり、ラストに向けて収斂されていく手法は映画的でかっこいいけれど、ちょっとウェットな本作に関してはあまり効果があがっていないのでは。たしかに、クライマックスの盛り上がりは大変な騒ぎなのだけれど。下敷きになっている『くまのプーさん』は苦手なのだが、大人になってしまったクリストファー・ロビンに対するぬいぐるみたちの復讐?なんて深読みするのは、意外と楽しかった。ビリー・ムーンが父親の支配からぬけだせないなんて設定には思わずニヤリ。

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