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  上海の紅い死  上海の紅い死
  【ハヤカワ文庫HM】
  ジョー・シャーロン
  本体 700円
  2001/11
  ISBN-4151731016
  ISBN-4151731024
 

 
  大場 義行
  評価:C
  タレントさんが起こした事件とは別に、やっぱり人は覗く事が好きなんではないだろうか。この話は、明らかに他人の事をあれこれと覗くという点でひっぱっていた気がする。中国の政治絡みもあり、主人公が詩など読むなど色々工夫しているけど、やっぱりこの本の魅力は一点のみ。殺された中国の模範労働者である女性は仕事の時は模範的だが、私生活では本当の所どうだったの、という点が最大の見所だった。まさしくこれは覗きだと思う。後半になって中国の政治的駆け引きがメインになると、とたんに魅力が半減した事でも明らかだ。正直に告白しますが、この女性に対する謎にとにかく惹きつけられました。しかし、中国に模範労働者という制度があるなんてしらなかった。

 
  山田 岳
  評価:A
  アメリカン・ミステリーの救世主シャーロンは中国人だった。物語の舞台も中国。陳警部は上海警察の<キャリア組>にして、詩人。共産党の研究集会への出席も決まり、何をしなくても将来が約束されていた。にもかかわらず、彼の特務班は運河で発見された女性の全裸死体の捜査をひきうける。何の手がかりもなく、捜査はいきなり難航するが、死亡したのが全国模範労働者の関紅英とわかって、急展開を見せる。全国模範労働者として周囲には一分の隙も見せなかった関だが、かくれていっしょに旅行をする男がいた。その男はカメラマンにして、共産党幹部の息子<太子党>呉。殺人事件はにわかに政治がらみのものになる。将来を捨てて逮捕に踏み切るのか、それとも・・・。陳に気をもたせるだけもたせておいて、日本に亡命した夫のあとを追うことにした女性記者、王楓とのかりそめのロマンス。親の代からの警察官で、せまい部屋に親子3人で暮らす<ノン・キャリア>兪刑事の、陳への反感から和解へ、などエピソードも盛りだくさん。(王楓の夫は亡命ではなくて、不法滞在だと思うのだが、中国ではそう言っているのかしらん)中国社会の<いま>をこれだけ赤裸々に描いた著者もアメリカに亡命するよりないでしょ。

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