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  ひらひら  ひらひら
  【集英社】
  池永陽
  本体 1,700円
  2001/11
  ISBN-4087752968
 

 
  石井 英和
  評価:D
  帯に「これは含羞(はにかみ)の文学です」の文字が踊っている。あからさまにそんなキャッチフレ−ズがブチあげられる事を、耐えられないと感ずるのがハニカミヤサンだろうと思うのだが。むしろ私がこの物語から感じ取ったのは臆面もなさだ。ヤクザ社会に溺れてゆくダメ男の人生を、ベタベタの感傷をもって描ききる著者の、臆面もないナルシズム。カラオケ大会を無理やり聞かされるようで、辟易してしまった。また、それは結果として、臆面もないヤクザ讃歌となってしまってもいるのだが、これでいいのか?私は別に小説を正義に奉仕するべき存在と信ずる者ではないが、いくらなんでも、という気がする。ヤクザは人間のクズだと繰り返しつつ、が、その裏返しの感傷という形で、ヤクザ社会に堕ちる事の陶酔を大声で歌いあげてしまっているのだ。どうかと思うよ。

 
  今井 義男
  評価:D
  1.身内や知り合いにヤクザがいた。2.仕事上で心ならずヤクザと関わりをもった。3.トラブルの相手がたまたまヤクザだった。4.同じ町内会にヤクザがいた。5.ヤクザウオッチングが唯一の趣味。堅気の暮らしをしていてヤクザと接近遭遇する理由は概ねこんなものだと思う。5以外の全てを経験した私が断言する。ヤクザは人間のクズである。一般市民の中にクズ以下の人間がいることを3や4から学んだのもまた事実であるが、それでも肯定するわけにはいかない。土足で顔を踏みにじられても、憧れていた伝説の男が殺されても、ヤクザのシノギが好きだといい切る主人公に、共感しろといわれても困るのである。かっこ悪くてもぜんぜんかまわないが、ヤクザである必然性もまったく感じない。それとも、シンパシーを抱く若者がいたら作者は満足なのだろうか。

 
  唐木 幸子
  評価:B
  私は初めて知った。ヤクザってピン札をピっと出して、釣りはいらねえと見栄を張るためにお札にアイロンまでかけるのね。本作を読んで試しにアイロンをかけてみたら、本当に新札みたいにピっとなるので驚いたぞ。今度から私もやろうかなあ。それはともかく、そんな背伸びもして、シンナーを中学生に売りつけ、女をバーで働かせて貢がせるようなチンピラでありながらも、こんなヤクザって本当にいるの?というくらい、主人公の常巳は心根が優しい。だから周囲の人間は皆、常巳の身を心配して、組長まで、おまえはヤクザに向いていないから足を洗えと言うのだ。さて、様々な試練と葛藤の後に、最後に常巳が足を洗うのか洗わないのか。それは読んでのお楽しみなのだが、私は結末が逆だったらAと言ったかも知れない。こういう結末だからこそ、この小説は良いんじゃないか、と言う意見の方が多いことは承知の上だが。

 
  阪本 直子
  評価:D
  一人称は難しい。作者の中から自然に出てくる文体と、語り手役の設定が合わなかったら、何とも奇妙なことになる。
 22歳の下っ端ヤクザ。ルックス悪く、腕っぷし弱く、性格はお人よし。向いてないからヤクザはやめろと、周りの誰もから言われてるし、実は本人にも判ってる。それでも頑張るバカな奴。こういう男の子の一人称にしては、何かそぐわない語彙ばかり。顕著に表れる、とか、色眼鏡でみる、とかね。作品の世界と作者の世界が、実は合ってないのじゃないかという気がします。会話文も気になるところ。ひたすら説明的なのだ。作者が言わせたかったことは全部字面に出てる。背後から立ち上ってくるようなものは何もなし。全部説明されてしまったら、ああそうですかとしか言いようがないよ。下手な作者だとは思いません。ただ、この小説は頭だけで考えて書かれてるよ。舞台設定が間違っていたと思います。

 
  中川 大一
  評価:D
  巻末に、ヤクザやギャンブル、刑務所についての参考文献が挙げられている。これは無論、作者や版元の誠意のあらわれだ。無断でパクっちゃいけませんからね。でもそのクレジットがあだになったのか、作中に描かれる暴力団の世界、なんだか薄っぺらく感じられる。突っ込んだ取材によるものじゃなく、本からの引き写しじゃないか、と。キャラクター造型もパターンの域を脱しきれない。いい味だしてる関西弁の男とか、古い任侠道に生きる渡世人とか、ぶち切れた中学生とか。ストーリーでぐいぐい引っ張るか、人間描写に徹するか。これはある意味相反するベクトルなんだけど、本書の場合、どっちつかずになっちゃったみたいだね。虻蜂取らず。二兎を追う者は一兎をも得ず。

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