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  影法師夢幻  影法師夢幻
  【集英社】
  米村圭伍
  本体 1,700円
  2001/12
  ISBN-4087753018
 

 
  石井 英和
  評価:D
  太閤秀吉没後の穏やかならぬ世の中、思わせぶりな内容の遊び歌が巷間を流れ・・・等々、前回の課題本、「太閤の復活祭」に共通する部分が多い物語の始まりで、つい「またその話かよ」などと口走ってしまったのだが、これでは言いがかりだな^^;それを別にしても、読破には忍耐がいった。とにかく各登場人物や彼らがかかわる事件に、さっぱり思い入れを持てないのだ。その後の展開に興味が湧かず、ペ−ジを繰る手は義務的にしか動かない。物語が単なる想像力の垂れ流しになってしまっていて、ドラマとしてのメリハリに欠けるせいかと思う。また、その語り口の、「軽妙」を狙っているのだろうが、「軽」ばかりが際立ってしまって、ただヒラヒラと流れて行くあたりにも問題があるだろう。軽いエンタ−ティメントであるからこそ、緊迫感を持って描かれるべきと感じた。

 
  今井 義男
  評価:A
  虚実錯綜する時代小説にはいくつかハードルがある。人名がややこしくてなかなか覚えられない。人物の相関図が複雑。地名がわずらわしい。さらにその時代特有の用語。意味も読みも分からない言葉が天日干しのアジの開きのようにずらりと並ぶ。敬遠する人がいるのもうなずけるが、実際はそんな大した問題ではない。分からなければちょっと調べるなり、メモするなりすれば事足りるのである。現代小説でも耳新しい言語はいくらでも出てくる。わずかな手間を惜しむのは、みすみす鉱脈をまたいで通るようなものだ。いまのところ米村圭伍の小説に当たり外れはない。破天荒な面白さという意味では減速した感もあるが、入り組んだストーリーは前作を凌ぐものがある。なにより作者自身が楽しんでいる姿勢がいい。

 
  阪本 直子
  評価:A
  「もぞりもぞりと窮屈そうに寝返りを打つ男がいます。名は勇名大五郎、豊臣家重臣大野冶長配下の侍大将です」……この書き出しだけで判りました。
 これはいける! 果たして、予想に違わぬ面白さ。いやあ、楽しかった。といっても、別に大坂城落城を巡って大スペクタクル絵巻が繰り広げられるとか、全然そんなのではないのですが。
 真田幸村の企みで、こっそり城から落ち延びた豊臣秀頼。その行く先はいずこ? ……いえいえ、巷に横行してるという、架空歴史物なんぞの類いじゃございませんよ。そーんな安っぽい代物じゃありません。極上品の法螺話です。
 内容は荒唐無稽、語り口はほのぼの、文章は上手い。会話はきちんと時代劇。ね、いいでしょう。朗読してもらうとしたら、今は亡き古今亭志ん朝師匠の声がぴったりです。

 
  中川 大一
  評価:B
  稀代の法螺吹き作家、米村圭伍の最新作。この人がかますギャグは大仕掛けだ。中村紀洋@大阪近鉄ばりのフルスイング。そのぶん空振りがあるのは仕方ないが、本書はヒット。二塁打くらいか。個々の人物や表現がユーモラスということのみならず、ストーリーを貫く骨格が壮大なインチキ史話。ある意味SFチックだが、時代小説であることとの違和は感じない。当方が史実に詳しければ、もっと虚実のあわいを楽しめるんだろうけどねえ。ニマニマしつつ、「この作者、こことこことは吹きまくっておるわい」てなふうに。でも、歴史音痴でもそれなりに読めるように書いてある。前作『錦絵双花伝』(2001年6月の課題図書)の主役が、こちらでは端役でちらりと登場。ファンサービスですな。

 
  仲田 卓央
  評価:C
  大阪城炎上とともに命を落としたはずの豊臣秀頼、しかしその存命を示唆する手毬唄が市中に広まり……、って、おい。こんな話、先月の課題図書にもあったぞ。流行ってるのか、これ。しかしまあ、先月のが暗号ミステリであったのに対して、こっちは『伝奇ユーモア』(そういうジャンルがあるのかどうかは知らんが)。 ちなみに先月の課題図書は、句点ごとに改行する神経症的なリズムと言葉選びのセンスの無さに、100ページも行かないうちに挫折しました。
 さて本作、物語としては可もなく不可もなく、チャンバラあり濡れ場ありのわりには全編に漂うほんわかムード。正月休みにヘビーな小説を読み疲れた向きにはちょうど良いんではないだろうか。肝心のユーモアの部分で全く笑えんのが痛いが、秀頼のキャラクターの立ちが良かったんで、チャラ。金曜時代劇あたりで映像化の際は、佐々木蔵之介あたりでどうでしょう。

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