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  読者は踊る  読者は踊る
  【文春文庫】
  斎藤美奈子
  本体 676円
  2001/121
  ISBN-4167656205
 

 
  石崎 由里子
  評価:C
   著者による独自にジャンル分けされた本のタイトル、作家名などなどなど。どんどこどんどこ出てくる出てくる。
 言いたい放題ではあるが、大作家の作品だろうが、食べ物ガイドブックだろうが、著者というフィルターを通した観察眼で、丁寧、意地悪、真面目の要素を盛り込みながら、評されている。ほほう、なるほど、と思わせる、最後の落ちもはっきりしている。
 読んだ本が面白かったりすると、その本を読んだ人と語り合いたいと思うことがある。でも、ベストセラーかロングセラーじゃないかぎり、なかなか同じ本を読んだ人には出会わない。その点、書評本はいい。自分が読んだこのがある本の部分から拾い読みしたり、面白い本を物色中のときなんかは、ぱらぱらめくりつつ、知らなかった作家の作風や雰囲気を垣間見ることができる。
本書は、一つ一つの書評が手短で、取り扱っている数が多いので、本探しをしている人には、多くの書評集と同様に、という意味で、いいのではないでしょうか。

 
  大場 義行
  評価:E
   普通、本の解説本は歪んだ愛情が面白い。でもこの本は歪んでいるだけ。愛情まるでなし。ベストセラーに対する嫉妬かな、なんて批評が延々と続くだけで、なーんにも残らなかった。だいたいこの本揶揄や茶化しが多すぎる。253冊のうち、褒めた本はわずかに数冊。全部に対してつまらないというのなら、読む意味はあるのだろうか。この本も彼女が槍玉にあげた本のリストと同列にそのうちなってしまうのかも、なんて思うと、なんの為の本なのか、何の為の読書時間だったのかと、こうして感想を書いているそばから、ただただ怒りが湧いてくるばかりである。まあ、これもリストの本をほとんど読んだことがないからであって、読んでいたら、「まさしくその通り、よくぞ言ってくれました」と、共感していたのかもしれないが。どうなんだろう。

 
  北山 玲子
  評価:A
   まずい。冒頭に出てくる「踊る読者」度が10だった(10以上だとかなり重度)。自分では踊らされていないと思っていたのに、これでは踊りっぱなしだ。まあ、そんなことはどうでもいいが。とにかく面白い書評本(といっていいのだろうか)だ。売れた本や話題作を取り上げ、それらが何故売れたのか、どのように読んだらいいのかをわかりやすく解いていく。相変わらず、事の本質をずばりと見抜く著者の目の確かさに感心してしまう。売れた本のみを語るのではなく、数冊の関連本と比較する方法には説得力がある。かなり厳しいことを言っている部分もあるけれど、わからないことをわからないと認め、勉強したうえでの見解なので一方的にけなしているような印象は受けない。あくまでも著者の取り組み方は真摯だ。取り上げるのはタレント本から歴史書、哲学書までとその範囲は広い。それにしてもつくづく日本人って踊らされやすい性質なんだなと実感してしまった。などと偉そうに書いてる私も、踊らされ度10だから人のこと言えないけど…。

 
  操上 恭子
  評価:B+
  斎藤美奈子さんは大好きな評論家で雑誌などで連載を見つけると熱心に読んでいるのだが、一冊にまとめられたものを読むのはこれが初めて。一つ一つの文章が短いこともあってツメの甘い所もないわけではないが、ズバズバと小気味よく切り捨ててくれるのが気持ちいい。権威やタブーをものともせず、というかより厳しくなる姿勢も嬉しい。残念なのは、文庫化に際して書誌情報が最新のものに改められていること。現在手に入りやすいものの情報を載せているのだろうが、本文で問題にされている初出版の時期や順番がわからなくなってしまっている。それにしても、これだけの本を(しかも読みにくそうなものばかり)しっかり読み込んで批判する体力、精神力にはただただ驚嘆するばかり。

 
  佐久間 素子
  評価:B
   斎藤美奈子、おもしろい! 寡作なので新聞や雑誌でみつけては喜んで読むのだが、明快、新鮮、健全。たいていはすかっとするが、たとえ納得できなくても笑えるところがすごいのだ。評論家として信頼しているし、次はどんな仕事をしてくれるのか、すごく楽しみにしている。本書は話題本の評論集という性格上、単行本時に、さらには雑誌連載時に読んでいる方が刺激的だったに決まってるのでB評定。夏休みの課題図書の読み比べ(苦笑)とか、聖書の読み比べ(爆笑)とか、古びない文も多いけれど、読む気があるなら一日も早くどうぞ。冒頭の「タレント本=私小説」論なんて、腑に落ちすぎて、私の中じゃもはや既成概念だもの。

 
  山田 岳
  評価:C-
  「カラオケ化する文学」「死ぬまでやってなさい。全共闘二五年目の同窓会」等々、目次を見ているだけでわくわくしてくる。なのに、本文を読み出したら<スカ(肩すかし)>をくったような気になるのはなんでや? いや、どうしてでしょ。うーん。あ、そうか! 著者は子どものころから教師に気にいられるように読書感想文を書くことのできた人。クレームがこないように、そつのない文章を書くことなどわけもない。かくして<毒>は薄められて<薬>となり、<良識ある>人たちから絶賛される。

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