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【文春文庫】
ジェフリー・ディーヴァー
定価950円(税込)
2005/12
ISBN-416766187X
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  久々湊 恵美
  評価:★★
 とある事件の登場人物を少し視点をずらして人物を見てみると、そこには意外な真実が……。
最初の一編、『ジョナサンがいない』を読んだときに「うわー、やられてしまった!」とシャッポの一つも二つも脱いじゃいました。
思わず、次は、次は騙されるまい。こいつだこいつが悪いやつに違いないと疑心暗鬼に読み進めてしまいます。ただ、たくさんの短編が入っているため、こいつはやられた!とやられない!が割と極端に入っているため、時々ガクリとさせられたのですが。
こういった類の短編ものは読み進めるうちに、もっと騙してくれと欲が深くなりますね。
私が気に入っているのは、『身代わり』と『サービス料として』。個人的にオススメです!多角的にみると変化していく話が気に入りました。
じゃあ、他のは?っていうと少し微妙かな?割合にすると普通に面白い。でもとびっきり面白い!は少なかったかも。

  松井 ゆかり
  評価:★★★★
 何の予備知識も無く(もちろん短編集だということも知らず)この本を手に取ったとき、最初に目に入ったのは帯の「どんでん返し16連発!」という謳い文句で、「そ、そんなにひっくり返る話っていったい…」と度肝を抜かれそうになった(そのとき思い浮かんだのは故ナンシー関さんの「『シベリア超特急』は“どんでん返しが3回”だそうだが、気を抜くとどれとどれとどれで3つなのかわからなくなる」といった趣旨の発言)。ごめんねジェフリー、勝手に勘違いしちゃって。いやでも、落ち着いて考えてみるとすごいですよ、オチのある話をこんなにたくさん思いつくというのは!
 何より好感が持てたのは、まえがきに書かれた作者の短編小説への愛着の深さである(ならびに作家としての読者に対する責任感も)。いい作家だなあ。

  島村 真理
  評価:★★★
 短編小説には、ハッとさせられるような刺激がないとつまらない、と私は思うのです。まえがきで著者ディーヴァーは「短編小説は、たとえるなら、狙撃手の放った銃弾だ。速くてショッキングなものだ。」と言っているが、まさにその通り。そして彼の作品は文字通りの見事な成果を収めているのだから。
短編16作品は、読者に予想した結末とは違う驚きを与えてくれます。本書の帯、「どんでん返し16連発」には笑わされたけれど、最後には大いにうなずくこととなりました。
胸がすくような、時にはゾッとするような、不安に陥れるような、そんなぴちぴちした刺激的な作品たちに出会うだけで、たくさんの種類の食事をしたように満足します。

  浅谷 佳秀
  評価:★★★
 長編ミステリーでは定評ある作家の、初の短編集とのこと。作品によっては翻訳にどことなくぎこちなさを感じる箇所がいくつかあったけれども、どれも面白かった。
 どんでん返しの王道であるところの、立場の逆転という要素を含んだ作品が多い。弱者と強者、追う者と追われる者、騙す人間と騙される人間の立場が、土壇場で鮮やかに入れ替わる。しかも、その逆転ぶりが実にクールなのだ。
 帯には、どんでん返し16連発とある。これだけどんでん返しを連発されるとなると、ある程度途中でオチが読めそうなものだが、それがそうやすやすとはいかない。作品によっては、オチがついたかなと思った後に意外な展開があったりして、かなり凝っている。
 全体の印象としてはダークな色彩が幾分濃いが、胸のすくような逆転劇あり、背筋がぞっとするホラーサスペンスあり、心温まる余韻を残してくれる作品ありで、飽きることなく堪能できる。

  荒木 一人
  評価:★★★★
 文句無く、面白い。まさに、どんでん返し16連発! ミステリ短編集の傑作。巧緻・巧妙な罠が、細心の注意で仕掛けられており、騙されるのが非常に心地良く、そして、楽しい。普段持ち歩いておき、ちょっとした空き時間で読むには最適であろう。その短時間で、十分堪能できる。全体のまとまりも良く、短編の見本の様な一冊に仕上がっている。
驚天動地の作品群の中で、表題でもある書き下ろしの「クリスマス・プレゼント」が異彩を放っている。「ボーン・コレクター」で有名なリンカーン・ライム元刑事のシリーズなので、よけいに期待してしまう。残念ながら、この作品に関しては期待し過ぎて、捻りが足りないと感じるのは、欲張りすぎだろうか。好みは「ビューティフル」、「三角関係」、「ひざまずく兵士」。
自分の見ているモノが、他人にも同じ様に見えているとは限らない、逆もしかり。
作品の題名は、原題の「Twisted」の方がやはりピッタリくる。

  水野 裕明
  評価:★★★★
 ディーヴァーの諸作は長編と言いながら、各章毎がそれぞれ質のいい短編で、それらを組み合わせて出来上がっているように感じていた。この短編集を読んでその感じがより強くなった。「ジョナサンがいない」をはじめとして多くの作品は、彼の長編の1章を読むような感じで、その前後に関連する多彩な章がつながっているように思わせる。ディーヴァーの長編は最後のどんでん返しへ向かって、どうなるのだろう、どうなるのだろうと期待をふくらませられ、早く早くとページを繰って読んでしまう。長編は情報や蘊蓄が多く、意外と密度が濃いので早く読み進めにくく、ついつい飛ばして読んだりしてしまうのだが、短編だとすぐにどんでん返しまで読み切れるので、その点愉しかった。意外に早くネタが割れてしまうものあり、シェイクスピアも登場するイギリスを舞台にした作品もあり、もちろんリンカーン・ライムの短編もありと、変化に富んでいて、読み続けて飽きないお得な1冊。ちなみに、「ノクターン」は「クリスマス・プレゼント」のタイトルにふさわしいハートウォーミングな結末でおすすめ。でも、面白さではリンカーン・ライムものが断トツだった。