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あほらし屋の鐘が鳴る
あほらし屋の鐘が鳴る
【文春文庫】
斎藤美奈子 (著)
定価660円(税込)
ISBN-4167656531
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  久々湊 恵美
  評価:★★★★

 女性誌に書いていたコラムということで、もっと感情論バリバリの陰口っぽいコラムを想像していたんですが。
 いやあ、男っぷりといいますか、もちろん女性から観た視点で書かれてはいますが、豪快です。潔いです。
 ものすごく鋭い視点から、バッサバッサとなぎ倒していきます。
 取り上げている話題は一昔前のものなので、ちょっと古かったりしますが、本当面白い!
 というか、女性誌にここまで書いちゃって大丈夫?なんて心配になってしまうほどの書きっぷりです。
 正面きって悪口です。悪口は堂々と、の姿勢で。
 ちょっと昔のコラムな分、今読むと「ああ。確かにこの雑誌こんな末路になったよなあ」なんて思うのも面白い。
 そうか!なんてはっとしたのは『渡る世間は鬼ばかり』のコラム。まったく気がつきませんでした。そういわれて改めて番組をみてみると確かにその通り。
 『失楽園』ダイジェストもゲラゲラ笑いました。確かに。その通り!1分でお話がわかります。
 読みながら「そうそう、そーなのよー」なんて同意の嵐。
 一回読んでみると物の見方が、変わっちゃいます。ちょっと意地悪に。ちょっと愉快に。

  松井 ゆかり
  評価:★★★★★

 美奈子節炸裂!ファンにとっては清々しい一冊だ。例えばお固い雑誌とかオヤジ向け雑誌とかと違って、少女雑誌に書かれたこれらの文章はすごくポップだ。真面目な評論ももちろんおもしろいけど、斎藤さんのユニークさを顕著に表現できる媒体なのではと思った。
 批評というものは、対象がよほどの名作でもないとその作品とともに色あせてしまう恐れがあるのではという印象があった。ましてや、対象が雑誌であればよけいに古びてしかるべきだと思うが、「あほらし屋」は現在でもとてもおもしろく読める。斎藤さんかなり筆がのっているようで、いつも以上に「そこまで言っちゃうの…」というところもあるが、これから先もどんどんイッちゃってほしいです。

  西谷 昌子
  評価:★★★★★

 斎藤美奈子は、女のいまの立場をとてもよく表現してくれる。ロマンチストなおじさんたちに対して鋭く突っ込みをいれ、冷笑を浴びせる。例えば『失楽園』やバイアグラ、新聞記事を見ると、女性に対する見方が単純すぎることがわかるということ。どんな種類の記事でも評論でも、おやじを持ち上げておいて、若者や女性をよく見もせずにこきおろすものが非常に多い。今の社会がまだまだ男性中心の社会であり、お金を持っているのは中年男性なのだから自然なことではある。
 かといって斎藤美奈子の目は男性を一方的に攻撃するだけではない。女性誌に対しても同じように冷酷な批判を浴びせる。舞い上がっている女子たちに、本当は男性社会にとらわれているだけなのだよと。彼女の姿勢は一貫して変わらない。しかも、これまでの女性史を踏まえているから説得力がある。読み終えたらスカッとすること間違いない。

  島村 真理
  評価:★★★★★

 斎藤美奈子は面白い、ということを実感した一冊。彼女の本を読むのは初めてなので、一目ぼれといったところでしょうか。
 1996年〜1999年の間「pink」と「uno!」にて連載されていたエッセイをまとめたもの。当時これらの雑誌を読んだことはなかったのですが、妙に浮かれていたあの頃を懐かしく思い出しつつ爆笑させてもらいました。
 著者がいうほど辛口すぎず、なんだかんだ言いつつマスコミの意見に左右される、“一つの意見に一致団結的日本人”に“ちょっと待ちなさいよ”と冷静な一言をアドバイスしていたような気がする。それも、独りよがりというよりは、少数意見の代弁というところがあるような気がします。だから、実は嘲笑の対象であったおじさんたちまでもファンにしてしまったのでしょう。
 当時刊行されていた雑誌を比較する、女性誌探検隊には脱帽です。今の雑誌についてもぜひぜひやってほしいところです。

  浅谷 佳秀
  評価:★★★★

 この本は、作者が「pink」や「uno!」といった女性誌に連載していたコラムを中心にまとめたもの。今回文庫化された、元の単行本は10年近くも前に出たもののため、各タイトルの鮮度は落ちてはいるが、内容に古さはあまり感じない。
 あとがきの「給湯室の思想」で自ら書いているように、作者は「女の子の味方」で「おじさんの敵」のようだ。一応、メディア上のスタンスだと断りはしているけれど。だから、おやじ読者層から面白いと評されるのも作者にしてみればうざいようで、どうしてこの本がおやじにも受けたのか、このあとがきで自己批判的に分析しているのには笑えた。私もおやじだし、ほめちゃいけないのかもしれない。おやじ慰撫史観なんてまあ、ほんと呵責ない。でも旗色をはっきりさせた主張は潔いし、分析は鋭いしで、常識的なおやじならおおむね共感できる内容だろう。しかも律儀なことに、多くのコラムに、2006年1月時点でのコメントを追加してフォローしている。ただ、リボンをつけているガイコツのイラストはうっとうしい。

  水野 裕明
  評価:★★★

 おじさんマインドの研究と女性誌探検の2つに分かれていて、特に「女性誌探検」はその名の通りいろいろな女性雑誌の紹介で、雑誌にまつわる裏話などもいろいろ読めるので、女性読者にはお奨めかもしれない。おじさんマインドの研究も、ほとんどジジイである私が読んでもそれほどイヤな感じを受けない。もっと暴論、極論が出てくるのかと思いきや、タイトルほどのことは無く、フンフンもっともですよね、そうそうその通り、という感じであまり驚きも、不愉快な感じもなく、すいすいと読めてしまえる。こういう論評というか時事物は暴論、異論の方が面白い(あまりに当たっていたりして読んでいて怒ってしまうこともあるが……)と思うのだが、この本は「何言うとんねん!ほんまあほらし!」と一刀両断していず、気持ち良く読める、意外な一冊であった。